食物繊維でストレス軽減?脳と腸の密接な関係

食物繊維について、どんなイメージを持っていますか?

便秘解消や腸内環境改善の効果が期待できる……ということはご存知のとおりですが、実はお腹の調子を整える延長で、ストレスの軽減にも役立つ可能性があるんです。

身近な「食物繊維」について、今一度そのスゴさを確認してみましょう。

豊富な食物繊維は、ストレス軽減のブースター

今回、食物繊維がタッグを組むのは、短鎖脂肪酸です。

大腸内で腸内細菌が食物繊維を発酵するときに産生される短鎖脂肪酸は、わたしたちの生命維持のためのエネルギー源として重要な役割を担っています。

加えて、この短鎖脂肪酸は、不安やうつなどのストレス由来の精神的負担を軽減するという働きもしてくれている、心身ともにありがたい存在であることがわかっています。

さらに、穀物や豆、野菜などの食物繊維が豊富な食材を摂ることによって、この短鎖脂肪酸の生成が活発になり、著しいストレスの減少が確認できたそうです[*1]。

腸が幸せになると、脳も幸せになる?

腸内環境は、人間の心の動きにも深く関係しています。多種多様な細菌たちが暮らす腸内。その中は、私たちの感情やライフスタイルにより、日々形勢が変化します。

ストレスや不安でお腹が痛くなったり、お腹を壊してしまったり。脳が受けたストレスによって腸に影響が出てしまうことはありますよね。同じように、腸の状態も脳に影響を与えているんです[*2]。

不安やうつといった症状をもつ人の腸内では、そうでない人の腸内と比べて、特定の細菌たちが活発になったり、弱ったりしている様子が見られるそう[*3,4]。脳と腸内細菌が私たちの思考や趣向をコントロールしているといっても、過言ではないかもしれません。

また、「幸福ホルモン」とも言われるセロトニンは、その9割が腸に存在しています[*5]。腸内が健康になることで、脳もリラックスできるかもしれません。

食物繊維は体に良い物質のもと

そして、腸内細菌の餌となるのが食物繊維です。腸内細菌がエネルギー源としているのは、脳と同じくブドウ糖などの炭水化物。

しかし、ブドウ糖などの多くは小腸で吸収されてしまい、細菌の多く暮らしている大腸までは届きません。しかし食物繊維は、体内に摂り入れてから大腸に届くまで消化されてしまうことなく、細菌たちの餌となることができます。

また、餌となるものが食物繊維であった場合、腸内細菌たちはビタミンB1や葉酸などのビタミンB群や、酪酸などの短鎖脂肪酸を産生します。

しかし、食物繊維がなく仕方なしにたんぱく質などを餌とした場合には、アンモニアや硫化水素などの健康に悪影響を及ぼす物質を作ってしまうこともわかっています。

食物繊維を摂るには、日本食がおすすめ

現代社会において、日本人のうつなどの精神疾患患者数が急増していることと、高脂肪・高たんぱくな欧米型の食生活への変化の間には深い関係があると言われています。

昔ながらの日本食には、根菜や豆、海藻、玄米など、食物繊維が豊富な食材がたくさん使われています。元気がない時のパワーチャージでお肉をがっつり食べるのもいいですが、食生活の基本を日本型にシフトチェンジすることで、腸内細菌がパワフルに働いてくれるはず。

日常的に食物繊維をしっかり摂って、老廃物を溜め込まない体づくりをしていきましょう!

参考:
*1. Short‐chain fatty acids: microbial metabolites that alleviate stress‐induced brain‐gut axis alterations
*2 脳腸相関とストレス
*3 Gut microbiota modulate neurobehavior through changes in brain insulin sensitivity and metabolism
*4 うつ病・自閉症と腸内細菌叢
*5 こころとからだの免疫学

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