秋の味覚といえばさつまいも。さつまいもといえば、食物繊維が豊富で、腸に優しいイメージですよね。
食物繊維には不溶性と水溶性の2種類があります。どちらも大腸内で発酵・分解されることで腸内環境を良くする効果が期待できます。
不溶性食物繊維は水に溶けにくい食物繊維で、保水性が高いため胃の中で膨らみます。腸を刺激して便通を促してくれる作用が。水溶性食物繊維は水に溶けやすく、粘性があるため胃腸内を通過する速度が遅い食物繊維。食べ過ぎや血糖値の急上昇を抑えてくれる他、不溶性食物繊維よりも高い整腸効果が期待できます[*1]。
五訂食品成分表によれば、さつまいもの食物繊維は100gあたり不溶性が1.8g、水溶性0.5g。同じ芋系で食物繊維がありがたがられるじゃがいもの不溶性0.7g、水溶性0.6gに比べると総量としては勝っています。
この食物繊維の効果、加熱方法によって期待値が変わるかもしれないんです。
蒸し加熱とレンジ加熱による食物繊維の増加量
さつまいもを調理する際、自宅で行うならば簡単なのはレンジ加熱、ちょっと凝るなら蒸し加熱ではないでしょうか。というわけで、蒸し加熱とレンジ加熱、2種類の加熱方法による食物繊維の増加について調べた実験を2つ見てみましょう。
1つめの実験[*2]では、徳島県産なると金時を厚さ2cm、直径4cmの輪切りにし、蒸し加熱(100℃ / 12分)、レンジ加熱(500W / 60秒)の加熱方法にて、加熱前後の食物繊維が定量されました。
その結果、有意差が見られたのは不溶性食物繊維の量。加熱前の不溶性食物繊維1.24%に対して、蒸し加熱後には2.26%、レンジ加熱後には1.42%に。ただし、水溶性食物繊維の量には変化が見られませんでした[*2]。
2つめの実験[*3]では各務原市産ベニアズマを厚さ2cm、直径4cmの輪切りにし、こちらは加熱後の硬さが同じ(破断強度9.0×104Pa)になるよう、蒸し加熱(100℃ / 12分)、電子レンジ加熱(200W / 3.5分)にて加熱前後の食物繊維が定量されました。
結果は加熱前の不溶性食物繊維量は1.8%、蒸し加熱では2.2%、電子レンジ加熱では1.8%。水溶性食物繊維量は加熱前2.1%、蒸し加熱3.3%、電子レンジ加熱2.7%でした[*3]。
この実験では試料間の有意差は認められませんでしたが、水溶性食物繊維を基質とした場合の培養液中の全糖量および12時間後の総短鎖脂肪酸量から、レンジ加熱のさつまいもにおける水溶性食物繊維は、腸内細菌によって分解されにくく発酵性が低いことが示されています。つまり、水溶性食物繊維を摂取したとしてもその整腸効果が低くなってしまっている可能性があるということです。
2つの実験結果をまとめると、以下のとおり。
1. 不溶性食物繊維量はレンジ加熱より蒸し加熱のほうが増加する可能性がある。ただし、同程度の硬さになるようレンジ加熱でも低いW数でじっくり加熱した場合は、有意差にならないことも。
2. 水溶性食物繊維量は蒸し加熱、レンジ加熱どちらも同程度になる可能性が高い。ただし、レンジ加熱では食物繊維の摂取によって得られる作用が蒸し加熱に比べて低い可能性がある。
以上のことから、食物繊維の整腸効果を期待してさつまいもを食べるのであれば、蒸し加熱のほうが良さそうですね。忙しいときや億劫なときは便利な電子レンジ加熱になりがちですが、時間があるときには蒸し加熱を試してみてはいかがでしょうか。食感の良さも期待できますよ!
参考:
*1 食物繊維の分類と特性|大塚製薬
*2 加熱方法の違いがさつまいもの食物繊維に及ぼす影響
*3 加熱調理がさつまいもに含まれる食物繊維の性状に及ぼす影響
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