安いプロセスチーズ、高いナチュラルチーズ
日本にあるほとんどのチーズが「プロセスチーズ」と呼ばれる種類であることはご存知ですか?
プロセスチーズとは、すでに発酵が止まったチーズであり、安定した品質を誇ります。ただ、加熱処理をしていたり、複数のチーズをあわせたりして作ることもできるため、チーズ本来の味を楽しみたい、という人にとっては少々物足りなく感じられることもあります。
ナチュラルチーズはその名前の通り、「自然のままのチーズ」であり、熟成が止まっていません。扱いや管理は難しいのですが、チーズ本来の味が楽しめるものです。ちょっと高級な料理店(特にフレンチ)で、「チーズはご入り用ですか?」と聞かれた場合、出てくるのはこの「ナチュラルチーズ」です。
日本にはたくさんのプロセスチーズがある一方で、ナチュラルチーズはあまり広まっていません。
ナチュラルチーズも昔に比べれば、スーパーなどでも購入できるようになりましたが、高値がつけられていることも多く、なかなか手が出ない、という人も多いのではないでしょうか。
しかし、海外ではかなりお買い得な値段で売られているナチュラルチーズ……。このような「値段の違い」はどうして起こるのかについて、チーズプロフェッショナル協会の「コムラード・オブ・チーズ」というチーズの資格を持っている著者がお話していきます。
日本のチーズと海外のチーズ、その値段差について
海外に行くと、ナチュラルチーズの安さに驚くことが多いと思われます。
私は今まで、西欧諸国は、ドイツ・イギリス・フランス・イタリアの4か国を回りましたが、どこも日本とは比較にならないほどナチュラルチーズが安く販売されていました。
もちろん、その時々の円相場によっても違いがあるのですが、日本の3分の1~2分の1程度の値段で、良質なチーズを手に入れることができます。
また、種類もとても豊富です。
とても小さい町の総菜屋さんの店の中央に、何十種類ものチーズが山のように積まれている、という光景は、決して珍しくありません。農場が近くにあるところに足を運べば、その農場ごとのナチュラルチーズが、非常に安価で売られているという特徴もあります。
チーズには関税と輸送費がかかる
日本に入ってくるチーズが、上であげたような「ヨーロッパのチーズ」とは違い、とても高価であることの理由の一つは、「関税」です。チーズは日本に入ってくる際、非常に高い関税がかけられます。その税金は30%近くにまでのぼるため、価格はとてもあがってしまいます。
加えて、飛行機や船を使って運ぶときに発生する「輸送費」も上乗せされます。
関税と運送費、この2つが大きな重しとなって、「日本のチーズ」にのしかかるのです。企業は商売ですから、この2つを加味したうえで、儲けが出る金額を設定しなければなりません。
「食べる人が少ないこと」も理由の一つ?
日本のチーズの消費量は、多少の増減はあるものの、基本的には緩やかに上昇しています。
しかしそれでも、世界でもっともチーズを食べる国であるフランスに比べると、フランス人が1年間に1人あたり約26キロを消費するのに対し、日本人の1年間に1人あたりが食べるチーズの量は2.3キロと、日本はフランスの10分の1以下にすぎません。[※1]
物は、多くの人が欲しがり買うようになることで、価格が下がっていく傾向にあります。薄利多売方式で値段をつけることができるからです。
日本の場合、まだまだナチュラルチーズは一般家庭に根付いているとは言い難く、これも「日本のチーズ」の値段を引き上げている原因の1つと言えるのかもしれません。
参考[※1]:チーズフェスタWEB
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