日本のチーズの歴史
チーズそのものの歴史は、紀元前6000年代にまでさかのぼれると言われています。
ただ、そのチーズが、日本に伝わってきたのはそれよりずっと後のこと。
今では、「プロセスチーズ」という形で多くの家庭に取り入れられている日本のチーズ。
今回は、チーズプロフェッショナル協会の「コムラード・オブ・チーズ」というチーズの資格を持っている著者が、日本におけるチーズの歴史についてお話していきます。
日本のチーズの原型の始まりは奈良時代
日本におけるチーズの歴史は、西暦650年の飛鳥時代にまでさかのぼれると言われています。
この時代におけるチーズは、「蘇(ソ)」という呼ばれ方をしていました。蘇の作り方はごく単純で、牛乳をひたすらに煮詰めて作ったものです。
単純に「蘇」というとき、それは若甦や熟成をさせていない状態を指していました。そのため、現在のフレッシュチーズのような味わいであったのではないか、と推測されています。
蘇は非常に高価で貴重なものでした。そのため、蘇は庶民の口には入らず、一部の上流階級の人間のためだけの食べ物でした。また、神様のための供物としても使われていました。
また、現在では製法が失われてしまいましたが、その蘇から作られる「醍醐」と呼ばれる乳製品はとてもおいしく、「最上」とさえも言われており、とても珍重されていました。ちなみにこの「醍醐」という名前は、現在の「本当の楽しさ」や「非常に美味しい」を表す言葉である「醍醐味」の語源だと言われています。
江戸時代のチーズ、そして現代チーズへ
さて、このようにして作られていたチーズですが、これは時代が経つとともにあまり作られなくなっていきます。牛が乳しぼりの用途としてではなく、農耕などに使われるようになって行き、乳製品が衰退したからと考えられます。
ただ、江戸時代には乳牛が幕府に送られ、時の将軍が「蘇」を復活させたと言われています。また、鎖国時代にも、オランダより少量のチーズが届けられました。
しかし、その当時も変わらず高価なもので、「庶民の味」には程遠かったチーズ。
北海道開拓の時代(明治)に、産業にしようとチーズ開発が始まりますが、日本人にはあわず、これもすたれていきました。
私たちの冷蔵庫に、当たり前のようにチーズが入るようになったのは、なんと1970年に差し掛かってから。
そのきっかけは、ピザやチーズケーキにあると言われています。つまり、チーズそのものを味わうというよりは、「料理やお菓子に利用する」という形で普及していったのです。
昭和45年(1970年)時点では、1人当たりの1年間の消費量は、わずか400グラムでした。しかし平成26年(2014年)時点では、1人当たりの1年間の消費量は、なんと2.2キロにまで登っています。44年間の間に5倍以上に増えたのです。これは過去最大の数字であり、今後も大きく減少することはないでしょう。
日本において、チーズは「不遇の時代」がかなり長い食べ物ではありました。しかし現在では多くの人に愛される食べ物に変わったと言えるでしょう。
参考:
一般社団法人 中央酪農会議
醍醐味の語源は乳製品だった?実は仏教と深い関係があります!
チーズフェスタ20年の歩み
日本のチーズの歴史
日本のチーズの歴史 雪印メグミルク株式会社