食塩の摂りすぎで引き起こされる疾患というと、何を想像しますか?血圧の上昇、高血圧症のイメージがある方が多いかもしれません。
しかしなんと、塩分が多すぎる食事は脳の機能にもマイナスの影響を及ぼす可能性があるそうなんです。
塩分過多な食事が脳の機能に悪影響!?
マウスを用いて行われた実験[*1]によると、過剰な塩分が含まれた食餌を与えられたマウスは、実験開始から数週間以内に脳の血流と血管内皮機能(血管の健康に関わる細胞の機能)に悪影響があったそう。
血圧に変化はないものの血流の量は減少し、血管内皮は機能不全が確認され、行動試験では認知機能にも不良が認められました。
原因となるのは腸の免疫システムにおいて重要な役割を果たす白血球の一種、Th17細胞の増加。Th17細胞は緑膿菌や肺炎菌、カンジダ菌といった細菌・真菌の感染防御に役立っていますが、過剰に活性化すると多発性硬化症、関節リウマチにつながる恐れもあります[*2]。
高塩分の食餌によってTh17細胞が増え、Th17細胞が放出するIL-17(細胞遊走や炎症を促進するタンパク質)の濃度が顕著に上昇。これによって脳における一酸化窒素産生の低下などが起こり、上記の機能不全や認知機能不全につながるそうです。
この研究はマウスによるものですが、このIL-17はヒトの脳内皮細胞にも同じような影響を与えるよう。塩分の多い食事は身体だけでなく、脳の健康においても悪影響なんですね。
なお同研究で、マウスに再び通常の食餌を与えるなどしてこうした悪影響を低減できることも判明しています。
食塩の推奨摂取量、摂取源とその量
上記の研究のような影響が出るほど食塩が多い食事を普段から摂っている人はあまりいないと思いますが、食塩はどれだけ摂取量を抑えるべきなのでしょうか。
世界保健機関(WHO)による食塩の推奨摂取量は5g/日未満。国内では、厚生労働省の「日本人の食事摂取基準(2015 年版)」にて、摂取の目標量が男性8g未満/日、女性で7g未満/日とされています。
しかし日本人は基本、しょっぱいものが大好き。自分で料理を作るとき、塩や醤油、味噌で味付けをすることが多いですよね。食塩の摂取は約7割が調味料からとなっています[*3]。
また、加工食品も塩分が多いものがあります。例えば、20歳以上の食塩摂取源となっている加工食品のランキング1位はカップ麺、2位はインスタントラーメン[*3]。
1日あたりの食塩摂取量ではカップ麺が5.5g、インスタントラーメンが5.4gと、1日の食塩摂取量の半分以上。カップ麺裏側の栄養成分表に記載されている食塩相当量を見ると、1食でこのくらいの量が含まれているんですね。
調味料で言うと、調理の際に塩をつまんで入れることがあると思います。指のサイズによる個人差はあると思いますが、だいたい0.5g〜1g。醤油大さじ1杯(18g)なら、食塩相当量は2.6g[*4]です。
こうして考えてくと、食塩摂取量の目標値である男性8g未満、女性7g未満という数字は意識せずにいるとすぐに超えてしまうもの。
加工食品はスープを全て飲まないようにしたり、汁物や煮物の塩分はだしを濃いめに摂って旨味を強くするなどして、塩分の摂取を抑えて行きたいですね。
*1 Dietary salt promotes neurovascular and cognitive dysfunction through a gut-initiated TH17 response
*2 腸内細菌によるTh17細胞分化
*3 日本人はどんな食品から食塩をとっているか?―国民健康・栄養調査での摂取実態の解析から―
*4 日本食品標準成分表
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