「美味しさ」というのは時代によって変化するもの。味覚にも流行があります。最近では塩レモンやパクチーなど、特徴的な味の食べ物の流行も珍しくなくなってきています。
では、日本人の味覚はいったいどのように変化しているのでしょうか。味博士に聞いてみました。
日本人の味覚はグローバル化している
──昔に比べて、今の日本人の味覚はどのように変わっているんでしょうか。
味博士「一言でいえば、味覚がグローバル化してるんですよね。やっぱり洋食を食べる率が上がっていますから」
──ここ30年くらいで急激に変化したと言われていますね。例えばどのようなものがあるんでしょうか。
味博士「代表的なものだと、脂分は確実に多くなってきていますね」
──ああ。「霜降りステーキなんて昔の日本人は食べられなかった」っておじいちゃんがよく言ってた……。
味博士「洋食で脂身を食べてると、和食でも脂が多いものを好んだりするんですよ。大トロとか」
──体が脂身に慣れていくという感じなんでしょうか。
味博士「あとはコーヒーですね。コーヒーが日本人の味覚を変えていると思います」
──そういえば、コーヒーの消費量は年々上がっていますよね。
味博士「和食って、苦味だけのものが少ないんですよ。例えば同じ飲料で代表的な苦味といえば抹茶や緑茶だけど、そういったものは旨味も同じくらい含まれていることが多い」
──確かに、それらと比べてるとコーヒーって「THE・苦味」ですね。
味博士「そうそう、それが苦味を学習することによって苦味が好きになる人が増えた」
──コーヒーのブラック派も増えましたよね。砂糖とか入れる人が減ったというか。かくいう私もブラック派です。
味博士「苦味が大丈夫になってきたから、コーヒーっていう隠し味も好まれるようになってきたんでしょうね。餃子にコーヒーゼリーとかね」
──味覚のトレンドというやつですか。
味博士「そうです。味覚のトレンドを見るときは、そういった新しく好まれるようになった味というのを見つけて、いろいろなところに取り入れて行くんです。まあ、コーヒーはそんなに新しくもないけど、確実にあるものなので」
──他に「これ!」って味覚はありますか?
味博士「同じところでいくと酸味かな。昔はせいぜい酸っぱい料理といえばナポリタンくらいの酸味だったと思うんですけど、今はトマトソース使われることが増えましたよね」
──ナポリタンて結構甘いですもんね。
味博士「2010年代前半には塩レモンの流行もあったし、より強い酸味が好まれるようになったということですよね」
──ちなみに変わらない味覚ってあるんですか?
味博士「塩味好きなところは、今も昔も変わらない気がしますね。ラーメンとか塩味だし」
──日本人の塩分摂取量って、厚生労働省から出ている塩分摂取の推奨量を超過してますもんね。
味博士「最近うち汁物を、だし汁みたいにしてるんですよ。キノコ必ず入れてて。そうするとキノコからグアニン酸(旨味成分)が出るから。かつおだしと昆布だしの混合だしを使えば、グルタミン酸・イノシン酸・グアニン酸が揃って旨味の相乗効果が狙えるんですよ」
──キノコ有能…!旨味をうまく使うと、塩味が効いてなくても十分美味しいですよね。
味博士「旨味こそヘルシーになる最大のキーポイントですからね」
──ちなみに味覚の「これから」はどうなっていくと思いますか?
時博士「旨味のブームがくるんじゃないかなあと。今は旨味ブームと言いつつ、結局純粋な“旨味”ではないというか。肉から溢れる肉汁の旨味とかですけど、それって結局しょっぱかったり他の味が結構強かったりするんですよね。グルタミン酸やグアニン酸などがうまく混ざったような、本当の旨味の美味しさを日本でフォーカスし、世界的にも旨味ブームが巻き起こせればすごく面白いな、と思います」
出典:日本のコーヒー需給表
味博士とは
ヒトの味覚を模した人工知能搭載の味覚センサー、「レオ」を開発した人。当たり前だが旨味が好き。
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