「美味しいものは体に悪い」というイメージがあります。これは子どもが大好きなハンバーガーやアイスクリーム、スナック菓子などを食べ過ぎないようにできた教えのような気もしますが、これらの食べ物がお世辞にも健康的と言えないのは事実ですよね。
ローマのトル・ヴェルガータ大学教授ヴァレーリオ・サングイーニ教授は、子どものころからジェラートが大好きで、長じて心臓専門医となりました。
心臓と長命について研究を続けているサングイーニ教授の最新の研究結果によれば、「美味しいものは体に悪い」という世間の一般常識はくつがえされることになります。体に良いジェラートを発見した教授の研究は特許を取得し、科学雑誌「Nutrition」にも掲載されました。
その驚きの内容を見てみましょう。
チョコレート・ヘーゼルナッツ・緑茶が最強の組合せ!?
サングイーニ教授によれば、老化を防ぐ「抗酸化作用」こそが、長寿の源だそう。
抗酸化作用がある食品は、赤色が特徴と言われています。ザクロやクコの実などがその代表ですが、教授は研究過程で、これらの食品に含まれる抗酸化作用が食卓にあがる頃には消滅していることを発見しました。
抗酸化作用の効能を失わずに維持できる食材は、ナッツ類、カカオの粉、緑茶。もちろん、これらの食材の保存において、高温多湿の場所は禁物です。
教授は研究結果をまとめてチョコレートとヘーゼルナッツ、そして緑茶味のジェラートが体によいことを証明しました。
「まずなによりも美味であることが特徴です。体によいものは子どもたちが喜んで食べるものがない、という常識はここで終わりました」と、彼は語ります。
とはいえ、この3種のテイストならばいかなるジェラートも「長寿の妙薬」となりうるのか、と聞かれれば答えは否。まずは原材料にこだわらなくてはなりません。
サングイーニ教授は、ヘーゼルナッツはその質の良さで知られている北イタリア産を、クリームに関しては同じく北イタリアのある工房で共同開発した、独自のレシピを使用。
さらに、こうした原材料を使い「健康によい」ジェラートを作り出したのは、ローマのあるジェラート工房との共同作業でした。
教授はそのジェラート屋から、作ったジェラートをバイクで大学の研究室に運び、研究を重ねたのです。この製法が、今回特許を取得したというわけです。
ヒトを対象にした実験では
研究では、20歳〜38歳までの14人に、9つの味のジェラートを100gずつ食べてもらい、そのあとに自転車のペダルを漕がせて、体内に起こる変化を観察しました。
その結果、教授の開発したチョコレート、ヘーゼルナッツ、緑茶味のジェラートを食べた人の抗酸化作用は体内で活発化し、体の動きに対して心臓はよりよく反応したのだそうです。
教授のインタビューによると、ジェラートを食した2時間後、治験者の血中のポリフェノールの値が飛躍的に上昇したそう。
具体的には、ジェラートを食べたあと自転車のペダルを踏んでいた治験者たちの心臓の鼓動は落ち着いており、脈拍数もあがっていなかったということです。これはポリフェノールの作用により毛細血管が膨張し、血流がよくなったためと考えられています。
『Nutrition』の記事は、サングイーニ教授の他、内分泌学の教授など4人との共同研究として発表されています
「原材料、製法まで研究し、ジェラートが心臓によい効果をもたらすことを証明した、世界初の記事といってよいでしょう。イタリア人として、私は我々の食文化の一端が長命に寄与できると証明できたことを誇らしく思います」とサングイーニ教授は結んでいます。
参考:
Un gelato allunga la vita. Il gusto perfetto: cioccolato, nocciola e tè verde – Repubblica.it
Natural antioxidant ice cream acutely reduces oxidative stress and improves vascular function and physical performance in healthy individuals – Nutrition
Vivere bene e a lungo, la ricetta del Prof. Valerio Sanguigni, il cardiologo del Powellnux – Corriere dell’Economia
関連記事:
季節の変わり目に!疲れには「梨」が有効?
子どもの好き嫌いはなぜ?大人の味は毒の味
パクチーが好きな人、嫌いな人の違いは?味博士に聞いてみた