冷蔵庫の中でも野菜の味は変わる
あなたはスーパーにどれぐらいの頻度で買い物に行きますか。筆者はだいたい週に1回で、1週間分の食材を買いだめする派です。
突然ですが、ここで買いだめされた野菜に視点を移してみましょう。ただ黙って野菜室に静置されているように見える野菜ですが、実はその内部でダイナミックな変化が起きているのをご存知でしょうか。今日はキュウリを例に、一週間後にどのような変化が起きるのかをご紹介します!
新鮮なキュウリは部位で味が違う
実践女子大学生活科学部の中町敦子さんらのグループは、7〜10日間キュウリを5℃または10℃で貯蔵した場合の味の変化を調べました。野菜の味は主にグルコースなどの「糖類」や、グルタミン酸などの「アミノ酸類」、そしてクエン酸などの「有機酸」などによって作られています。そこで、キュウリに含まれるこれらの成分が貯蔵と共にどのように変化をするかが測定されました。
まずは、キュウリの部位による味の変化についてご紹介します。あなたは、買ってきたキュウリを使うとき、ヘタの側と花のあった側どちらから使い始めるでしょうか。実は、味としては花のあった先端から使う方がオススメなのです。
中町さんらの研究では、キュウリを4等分して、それぞれの部位の貯蔵前・貯蔵7日後の成分量を調べました。その結果、貯蔵前のキュウリでは部位1が部位4に比べて糖分が多く、有機酸の一種であるリンゴ酸は部位1に近いほど少ないことがわかりました。糖分は甘味、有機酸は酸味に関係しますので、貯蔵前のキュウリは、部位1の方が甘くておいしいことがわかります。一見均一に見えるキュウリですが、部位によって含まれている成分の量が違うのですね。
さらに、7日間貯蔵すると部位による糖分量の差はなくなり、有機酸は部位4の方で多い傾向になっていきます。これは成分が代謝されたり部位間を移動したりすることが理由だと考えられています。こうして7日も経つと、貯蔵前にあった部位ごとの味の偏りがなくなっていくのです。キュウリの甘味を堪能できるのは貯蔵初期の部位1付近、という限られたタイミングだと言えます。これが、買ってきたキュウリは花のあった先端から使う方が良い理由です。
一週間のうちに栄養成分が減ってしまう!?
野菜は新鮮な方が良いと言われますが、実際に新鮮さが失われた野菜は、栄養成分にどのような変化が起きているのでしょうか。同じくキュウリを例に見てみましょう。実験は5℃と10℃で行われましたが、より冷蔵庫の温度に近い5℃の結果をお伝えします。
まず、甘味の成分であるグルコースやフルクトースなどの糖分は、一週間も経つとフルクトースは元の8割程度に、グルコースは7割程度に減ってしまいました。つまり、甘味が減ってしまうのです。また、有機酸のうちのリンゴ酸は元の6割ほどになり、別の有機酸であるクエン酸は元の5倍になりました。これは酸味が増すことにつながると言えるでしょう。
さらに、野菜を食べる意義の一つに野菜からビタミンCを摂取することがあるかと思いますが、ビタミンC(アスコルビン酸)は、なんと13%にまで減ってしまっていました!一週間後のキュウリを食べても、得られるビタミンCはだいぶ減ってしまっているのです。
やはり定説通り、野菜は鮮度が失われると味が落ちていくことや、栄養成分が減少していくようですね。この実験から、キュウリは部位1の方から食べ、そしてなるべく早めに食べきるのが良いと言えそうです。キュウリを買った際には、ぜひ意識してみてくださいね!
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