炊飯時の水をミネラルウォーターに変えるとどうなる?
最適なお米の浸漬時間は?お米の吸水と食感についての記事でご紹介したとおり、美味しいご飯を炊くにはある程度の条件を守らねばなりません。
お米を炊く際に気になることといえば、使用する水です。例えばミネラルウォーターを利用した場合、硬度によって野菜や肉が柔らかく仕上がったり、硬くなったりします。「硬度」とは水に含まれるカルシウム、マグネシウムの質量のこと。高いほどこれらのミネラルが多く含まれるため、食品の食感や見た目、味に対して影響を与えるのです。
ではミネラルウォーターで炊くことによって、ご飯はどのように変化するのでしょうか。炊飯水とお米の関連による実験結果から見ていきたいと思います。
ミネラルウォーターでの炊飯はご飯の硬さに影響するか?
実験は無洗米300gに対し、20℃の試料水450gを加え30分浸漬。その後炊飯器約35分間加熱し、蒸らし時間を15分としたお米で分析されました。
実験に使用された水およびミネラルウォーターは以下のとおり。
・蒸留水
・アルカリイオンの水:硬度59mg/L(軟水)
・Vittel:硬度約315mg/L(硬水)
・Contrex:硬度約1,551mg/L(硬水)
・海洋深層水1:硬度330mg/L(硬水)
・海洋深層水2:硬度約700mg/L(硬水)
・海洋深層水3:硬度約3200mg/L(硬水)
これらを使用して炊飯した結果、炊き上がったご飯の重量変化率や破断特性に有意差はなく、お水の種類による硬さの変化は見られないと言えるようです。
カルシウムはお米表面の物質や内部の成分と結合しお米の給水を阻害することで、ご飯のパサつきを発生させると言われています。実験では硬さには影響を及ぼさないという結果になっていますが、筆者の経験ではやはり少し炊き上がりが硬めになる印象。これは破断や水分量ではなく、口当たりが硬くなっているのかもしれません。
ミネラルウォーターと蒸留水での炊飯の違いとは?
硬さには違いがないものの、嗜好評価には差が出ています。硬度700㎎/Lのミネラルウォーターまでは蒸留水で炊いたご飯と同じように好まれたものの、それ以上の硬度であるContrexは色と味の評価、硬度約3200mg/Lの海洋深層水では色・香り・味の評価が低下していました。
硬度の高いミネラルウォーターで炊飯すると、お米は黄色味がかかる傾向があります。お米が黄変する原因はメイラード反応(アミノカルボニル反応)によるもの。これは糖とアミノ酸が結合し反応しメラノイジンという茶色の物質や香気成分が生成される現象で、ステーキの表面の焦げ目、おこげなどがわかりやすい例です。
カルシウムやマグネシウムはこの反応を促進すると言われており、硬度の高いミネラルウォーターほどご飯が黄変してしまうのです。
メイラード反応が最も活発化するのは155℃。メイラード反応が十分に起こった食品における「焦げ目が美味しい状態」を完成形とするならば、一般的に100℃程度である炊飯時の温度では中途半端なのかもしれません。
論文中で具体的な評価が言及されていないため詳細は不明ですが、香りや味に対する評価の低下は前述のメイラード反応やカルシウムがお米の成分と結合することの影響である可能性があります。
ご飯の美味しさにおける最大の魅力はその甘味ですが、炊き上がったご飯の見た目や香りが悪いと「なんとなくおいしくない感じ」がするのではないでしょうか。
硬度の高いミネラルウォーターを使ってご飯を炊くメリットとしては、カルシウムやマグネシウムなどのミネラルを摂取できるということが挙げられます。どちらかというと美味しさの追求より栄養分摂取としての側面が強くなるかもしれません。炊飯時には用途によって使い分けすることをおすすめします。
参考:
炊飯水が米飯の性状および嗜好性に及ぼす影響
農林水産省
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