炊飯前の浸漬時間は正確に設定すべき
炊きたてご飯はそれだけでご飯3杯食べれるほど美味しい食品ですが、炊飯は洗米回数などによって味が変わるデリケートな調理でもあります。
なかでも恐ろしいのが浸漬時間。「今日は時間があるから少し浸けてみようかな☆」「ご飯洗ったまま炊くの忘れてた…☆」と軽い気持ちで吸水させたが最後、炊き上がりがぬっちゃぬちゃになっていた経験はありませんか?
こうなってしまっては我慢してそのまま食べるか、おかゆ・おじやにするほかありません。絶望。というわけで今回は大阪ガス株式会社エネルギー技術研究所と兵庫県立大学による、浸漬時間とお米の構造・テクスチャを解析した実験の論文から、お米の最適な浸漬時間を探してみたいと思います。
吸水率には有意差なし!?
実験では米について2013年の丹波産こしひかりを使用し、浸漬温度を10℃、浸漬時間を0分・20分・60分・120分の4種設定。それを鍋で20分熱したしたのちに10分間蒸らした後に放冷し、試料としています。
炊飯時の重要項目といえばお米をふっくらとさせ甘味や粘りを引き出す「糊化」。糊化は水と熱がでんぷん粒に作用し分子結合が切断することで起こります。十分な糊化を望むにはでんぷん重量の30%の水分が必要とされており、水分不足による糊化の不完全化を防止するためにお米を浸して吸水させる方法が取られています。
では、浸漬時間によってどれだけ吸水率に差があるのかを見てみましょう。
開始から20分までの吸水率は急激に上昇。その後60分までは緩やかな増加、60分以降はほぼ変化がありません。ただ0分は吸水不足といえますが、20分〜120分は有意差があるとは言えず、ほぼ変わらないようです。
さらに0分を除く20分・60分・120分は炊飯後の水分率に有意差がない状態。さらに注目の糊化度に関しては0分〜120分のすべての浸漬条件で90%程度を保っており、吸水率・水分率と糊化の相関も確認できなかったようです。
食感の違い
水分や糊化については少し拍子抜けしてしまう結果になっていますが、食感には違いが生じています。
まずは弾性率。浸漬時間が長くなるにつれて下降していますが、60分と120分ではほぼ同じ状態です。
粘性率も同様かと思いきや、60分までは下降しているものの、120分のものが増加に転じています。
破断エネルギー(噛み切る力)に関しても120分は0分と同程度の値を示しています。これは浸漬時間が長くなるにつれ米内のでんぷんが溶出。とくに60分から120分の間にその量が増え、お米の表層・内部構造が変化したことによるものです。
最適な浸漬時間の考察
では簡単にまとめてみます。糊化度に関してはほぼ変わりがないため触れていません。
0分
コシがありもっちりしている。
水分量が他と比べ少ないため、少しパサついて見えることも。
かためが好きな人は0分一択かしら。
20分
水分量が0分より多いことから見た目の艶っぽさが得られる。
コシやもちもち度は0分より下がっているがほどよく柔らかい。
この4種類のなかでは優勝(※独断)。
60分
4種類の中では一番柔らかく、噛み切りやすい。
おかゆとご飯の間くらいのイメージ。
やわらかいご飯を食べたい人や喉が細い人におすすめ。
120分
コシは60分と同等だがもちもち度が高く、噛み切る力は0分と同等のパワーを要する。
一言で言えば少々べたついている。
でんぷんが溶出しているため美味しさが下がり気味。
※食感や見た目、味に関しては数値からの推察および類似環境を再現した個人での実験結果から評価しています。論文と直接関連しない部分も含まれます。
実験結果は鍋によるものです。糊化を考えると鍋による炊飯は加水・加熱環境ともにお米にとって最適な環境を作りやすいため、炊飯器での炊飯はまた違う結果になるかもしれません。厳密な実験ではありませんが、個人的に自宅の炊飯器(安価)で試した目安としては+10分くらいで考えるとちょうど良い気がしております。
また実験では水温を10℃にしています。東京都の場合ですが水道水の温度平均は1〜2月で10℃を下回り、6〜9月では20℃を超えます。冬は少し長め、夏は短めでの設定をおすすめします。
なお、洗米回数による味の変化について味覚センサーで検証した結果もありますので、合わせてご覧になってみてくださいね♪
→【朗報】楽なのに美味しく炊き上がる洗米の方法を発見
参考:
でんぷんの糊化とその概要
浸漬時間の違いによる米飯の構造とテクスチャーの関係
トピック第3回 水道水の水温 | 水源・水質 | 東京都水道局
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