「ゴキブリを食べて人生にインパクトを」—地球少年が語る「昆虫食」の奥深い哲学とは

昆虫を食糧とする、昆虫食の文化。
多くの人は日常生活で昆虫を食べる機会はほとんどありませんが、昆虫食を愛する人というのは確かに存在するのです。
その一人が、慶應大学の学生であり、「地球少年」の肩書きを持つ、篠原祐太さんです。

篠原さんは、ゴキブリやコオロギがカニやエビに似ているかを味覚センサーで検証した際にも、昆虫の提供に協力してくれました。
今日は、篠原さんに、昆虫食の魅力を存分に語って頂くことにしました!

◎篠原祐太
1994年、地球生まれ。21歳。慶應義塾大学在学中。地球の自然や動植物をこよなく愛する。現在は、数千匹の生き物たちと同棲する傍ら、4歳の頃から続ける「昆虫食」の可能性を探ると共に、TV出演・イベント主催・SNSでの情報発信等により、その魅力を伝える活動に注力している。詳細はHPTwitterFacebookにて!


■味付けせずに、おやつとして愛用

◎4歳頃から昆虫を食べていると聞きましたが…!
篠原:はい、4歳の時に初めて虫を食べて以来、昆虫食に魅了されて、16年間にわたって昆虫食のキャリアを積み重ねてきました。
今は、小腹が空いたときのおやつとして食べる事が多いです。

◎食べ方としてはどのように?
篠原:ケースバイケースですね。揚げたり、焼いたり、炒めたり、何でもやります。ただ、虫本来の素材の味を楽しみたいので、あまり味付けはしません
慣れない方は、素揚げにして塩をかけると美味しく食べられますよ。

◎今は夏ですが、昆虫にも旬ってあるんですか?
篠原:春はイモムシ系、夏はセミ、秋はバッタやコオロギ、冬は木の中にいる幼虫を食べるのが好きですね。
時期や場所によっても違ってくるので、予想できないのも楽しみの一つです。

◎昆虫は自前なんですか?
篠原:多くは家で同棲しているものですが、買ったり、養殖屋の友人から貰う事もあります。
今は、数千匹の昆虫が家にいて、一緒に昆虫を食べて感想を共有し合う仲間として、ハリネズミやトカゲとも一緒に住んでいます。

◎食用の昆虫はどういう基準で選んでいるのですか?
篠原:本当は一番美味しい昆虫を探せたらいいのですが…採取しやすさ入手しやすさが基本です。
よく食べているのは、コオロギトノサマバッタ系や、爬虫類や鳥のえさになっている幼虫の類いが多いですね。

■命のあり方を考えさせてくれる存在としての昆虫

◎すっかり昆虫食に魅了されているようですね!何が一番魅力的ですか?
篠原:食べることはもちろんですが、虫を探したり、捕まえたり育てたり。その一連の行動全てが、命と向き合う試みなんです。そこに大きな喜びを感じます。本能をくすぐられる感覚もあります。
小さい頃から、食事の際に、食べ物に命を感じられていないことに対して違和感があったんですよね。特に外食している時とか。
僕は、食べるという行為や自分自身の身体には、責任を持ちたいし、食べるものも自分で考え、自分で選びたいんです。
命とは何か食べるとは何か、そういったことを考えさせてくれるのも、昆虫食の大きな魅力です。

◎深いですね…!命と向き合う喜びって、具体的にどんなものなのでしょうか。
篠原:そんな特別なものでもなくて、人が自分自身や他人に対して、真摯に向き合った時に感じる喜びに近いです。
虫も個体ごとに個性があって、それに向き合う中で驚きや発見があります。未知や予想外のものと出会える楽しさは尽きないですね。

◎ところで、人間は好きですか?(笑)
篠原:もちろん好きですよ(笑)。でも、事実として、生態系の頂点にたっている側面もある人間だからこそ、果たすべき役割もあると思うんです。
食べるだけ食べて、楽しむだけ楽しんで…
人に何かをされたら返すのに、自然に返さないのは何故だろうって思うんです。

◎人間が自然に返せることとはなんでしょう?
篠原:たとえば、野糞はプラスになると思いますよ。これは、糞土師として活動されている伊沢正名さんと出会った時にハッとさせられた着眼点です。彼のことは尊敬しています。軽く説明すると、排泄物を自然に返すことで真の意味での、生態系の循環が完成するはずです。しかし、それをひとたび水洗トイレに流してしまうと、循環にならないどころか、それを処理する過程でエネルギーも使うことになる。
プラスどころかマイナスです。勿体ないですよね。もちろん、現実的に難しさがあるのはわかりますが、そこで引き合いに出される、倫理観や良心は、真の意味での「良心」とは言えないのではないか、と。

■ゴキブリを食べて人生が変わる

◎そんな昆虫食の魅力を伝えるべく、イベントを開催されているようですが…!
篠原:去年は昆虫食のイベントを50回ほど開催しました。
幼稚園児から大人の方まで幅広い方が参加してくださって、とても感謝しています。
昆虫食のイベントをやっていると、先入観や情報の刷り込みがいかに強いものであるか痛感します。ただ、それだけ強い先入観があるからこそ、逆にそれを利用してできることもあると思っていて。

◎確かに、昆虫を食べることへの抵抗感は大きそうですね。
篠原:たとえば、ゴキブリは普通食べないどころか、嫌われ者じゃないですか。
でも一歩を踏み出して食べて、それが美味しかった時、先入観が大きく崩れると思うんです。
ゴキブリを食べるだけで価値観が揺さぶられ、考えるきっかけになり得る。昆虫食の可能性は、こういう部分にも強く感じます。

◎興味が湧いてきました!一人で参加しても大丈夫ですか?
篠原:どんな人でも大歓迎です。様々な経緯で来た人たちから生まれるコミュニケーションも大切にしています。
僕は昔から虫を食べてきた人間ですが、この視点だけでは見えてない部分もあるんじゃないかと思うんですよね。
だから、虫が嫌い・怖いという人の感覚から学べる点も多くて。いろんな価値観の人に参加して欲しいです。

■実体験と情報の両輪で歩む

◎今後は昆虫食とどのように関わっていきたいですか?
篠原:昆虫食といっても、捕まえるところから食べるところまで、いろんな切り口があります。
その中で、自分はどこに魅力を一番感じているのか、何に喜びを感じているのかをもっとはっきりさせたいですね。
「昆虫食の人」のように、何かしらの肩書きを持つと、それに囚われてしまう怖さも感じています。そこに拘りを持ちつつも、それすら疑い続けたいと考えています。自分という人間や本質的な欲求を追求しながら、活動していきたいですね。

◎昆虫の研究者もお考えで?
篠原:選択肢の一つではあります。僕は、自分のリアルな体験をベースに情報を学んでゆく中で、今後の方向性を探ってゆきたいと思っています。さかなクンのような、「好きをとことん極めながら、その魅力を社会にわかりやすく伝えられている方」は一つのロールモデルですね。

非常にユニークな方で、お話を聞いててこちらも考えさせられることが多かったです。
篠原さん、貴重なお話ありがとうございました!

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