インタビュー

カクテルに新しい風を吹き込む「ミクソロジー」とは?【前編】

混ぜることを追求する、新しいバーテンダーの形

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仲間とワイワイ楽しみたい時は、自宅や居酒屋でビールをがぶ飲み。一方で、一人でしんみりしたい時や友人とゆっくり話がしたい時は、バーに行ってカクテルを作ってもらう。お酒の楽しみ方にはさまざまなスタイルがありますね。もちろん、お酒は人をほろ酔い気分にして対人関係を円滑にするだけではなく、お酒自体の美味しさで幸せを生み出すこともあります。

お酒の割り方やカクテルの作り方にはある程度パターンがありますが、まだ見ぬ組み合わせを追求し、もっと美味しいお酒を生み出してお客様を幸せにしようとしている人たちがいます。「ミクソロジスト」の方々です。

「ミクソロジー」とはMix(混ぜる)という言葉にology(論)をつけた造語で、混ぜることを追求するといったような意味合いを持っています。ミクソロジーを行うバーテンダーを「ミクソロジスト」と呼び、素材選びから製法まで、カクテル作りの一連の方法を見直し、さまざまなアプローチで新しいカクテルを生み出そうとされています。

今日は、そんなミクソロジーの世界に踏み込んでみましょう!

現役ミクソロジストにインタビュー!

今回お話を聞かせていただくのは、都内でミクソロジーカクテルを開発し、ミクソロジーカクテルの美味しさを広めるバーを運営しているミクソロジストの南雲主于三(以下、南雲)さん。

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◎南雲主于三さん。スピリッツ&シェアリング株式会社代表取締役。ミクソロジストとして数々の年間200種類以上のカクテルを開発し、都内でバー「CODE NAME MIXOLOGY」を運営しながらミクソロジー界をリードしている。

さっそく、いろいろ教えていただきましょう!

「ミクソロジー」は哲学だ!

◎まず、「ミクソロジー」という言葉の意味を詳しく教えてください!

南雲混ぜるということを自由に垣根なしに追求していくスタイルであり、そのように作られたカクテルの総称ですね。たとえば、フルーツのカクテルでも、リキュールを使わずにフルーツ自体をそのまま使って作ってみようとしたり。新しい技術や素材を使って、古典的なカクテルを自分なりに再構築したり、全く新しいカクテルを生み出したりしていくのが、ミクソロジーです。そして、ミクソロジーの考え方を取り入れてる人がミクソロジストと呼ばれています。」

◎哲学的ですね!あまり耳にしたことないんですが、最近生まれたスタイルなのでしょうか?

南雲「元々、1990年台にロンドンやサンフランシスコで生まれた言葉で、それまではパブのバーテンダーも名門ホテルのバーテンダーもどちらも「バーテンダー」と呼ばれていました。ホテルは街中のバーと比べると食材も豊富でしたので、ホテルのバーテンダーたちは、キッチンにある材料や道具を使って新しいカクテルを作り始めたんです。そして、「新しいことをやってる俺たちに、別の名前つけないか?」という流れになって、ミクソロジーという言葉が生まれたんです。」

◎では、ミクソロジストとバーテンダーは別物なんですか?

南雲厳密な境界線を引くのは難しいですね。というのも、混ぜることを追求するというのは、日本人のバーテンダーさんはずっとやっていました。海外では、もっとアクロバティックに、エンターテイメントに、というようにカクテルが進化してきたのですが、日本人は昔から、シェイキングや氷にこだわったり、混ぜるという本質的な部分を追求してきたのです。

◎日本人の国民性が、バーテンダーの世界にも反映されていたのですね。

南雲「そうですね。だから、混ぜることを追求するのがミクソロジストで そうじゃないのがバーテンダーといってしまうと語弊がありますね。カクテル全体を捉えて新しい価値、新しい味を生み出していくのがミクソロジーカクテルなんです。」

SNSが海外のカクテルを進化させた?

◎ということは、同じカクテルを作るにしても、日本人が作る方が丁寧で美味しいんですか?(笑)

南雲「ええ(笑)、僕は2006〜2007年までイギリスにいましたが、当時は断然、日本のカクテルのほうがおいしかったですよ。海外のほうが組み合わせとして面白い物はあったのですが、極端に甘いか酸っぱい、クリーミーなものはものすごくクリーミーといったように、大味でした。それが、2009年頃から変わり始めたんです。」

◎何かきっかけがあったのでしょうか?

南雲「お酒のメーカーさんが次々とコンペティションを開催し始めたんです。自社のお酒を使って世界中のバーテンダーを対象に新しいカクテルを作ってもらい、ワールドチャンピオンを決めるというものですね。ここで勝つのがバーテンダーにとってすごく栄誉になって行き、みんなこぞってチャンピオンを狙いに行ったんです。」

◎そこで勝つとバーテンダー人生がバラ色に?

南雲「なりますね。世界的に名前が知られることで 世界各国でセミナーをやったり開発依頼を受けたり、給料も増えて独立する人もいます。それまではあるコンペティションで優勝しても、英語のウェブサイトで告知されるくらいでしたが、今はFacebookなどのSNSが発達してるおかげで、優勝すれば世界中に共有されるんです。」

◎そういう投稿を見ると「俺もかっこいいの作らなきゃ!」ってなりそうですね。

南雲「実際2009〜2014年ごろは、SNSの投稿を見たバーテンダーが、来年どうしよう、次のコンペどうしようとなって、カクテルの技術革新がものすごいスピードで進んでいきました。たとえばダイヤモンドカットと呼ばれる日本の作る綺麗な氷を取り入れたり、日本の技術を学ぶ人も増えました。Youtubeでもシェイキングの動画を見て学んだり、知識も技術もボーダレスになっていったのです。」

コンペに受かるカクテルの作り方

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◎コンペでの良し悪しは、どうやって決まるんですか?

南雲「飲料メーカーのコンペは、メーカーの商品を使ったコンペなので、商品がいかに活かされていたかを問われます。それを使わなくても同じ味が出せるようなものだとアウトですね。なぜこれを使ったか、なぜこの組みあわせなのかを明確に説明できて、ブランドを活かせていることが大切です。」

◎どんな風にカクテルを作るのですか?

南雲「やり方の一つは、まずは主役にするお酒の味や香り、余韻というのをチャートにします。次に、バックボーンとして、材料や製法・歴史なんかを紐解いていきます。その中で、どこを強調するかを決めます。たとえば、このお酒自体がお花のような香りがするのであれば、それに相性の良いハーブを選んで味を構成しようという方向性が決まります。それで、歴史を見て、このお酒が生まれた年代に何があったかを調べて、その時使われていたグラスウェアを使ってみよう、などと決めていきます。」

◎カクテルににストーリーが生まれるんですね!

南雲「味だけではなく、プレゼンテーションが優れているかというのも、同じウェイトで問われるんです。どんなにおいしくても、無言で差し出すバーテンダーはダメですね。飲んでる人は、目の前にあるカクテルが何かを知りたいんです。ストーリーを聞いて、より感動を生み出せるかどうかが、点数の決め手になってきますね。」

◎大変奥深いですね!カクテルの組み合わせにそんな想いが込められているとは考えたことがありませんでした。

前編では、ミクソロジーが生まれた背景のカクテル文化をお尋ねしてみました。後半では、南雲さんご自身のミクソロジストとしてのご活躍っぷりを特集いたします!お楽しみに!

店舗情報

The Bar codename MIXOLOGY tokyo
東京都中央区八重洲1-6-1第三パークビル2F
[月~木・土]18:00~26:00
[金]18:00~翌4:00
日曜・祝日定休日

The Bar codename MIXOLOGY akasaka
東京都港区赤坂3-14-3 渡林赤坂ビル 2F
[月~金]18:00~29:00
[土]18:00~26:00
日曜・祝日定休日

MIXOLOGY Laboratory
東京都中央区八重洲1-6-1 八重洲第三パークビル 3F
[月〜土]18:00~翌1:00
日曜・祝日定休日