前回の記事で、「包丁の切れ味で味が変わることが分かった」とお伝えしました。
これは、繊維細胞が壊れて旨味が流れ出すためだと考えられます。また食材によってはピーマンのように舌に触れた瞬間の苦味がより強く出てしまう可能性も考えられます。
つまりは、少なくとも舌にあたった瞬間の味覚に影響するということなのです。
そして、さらには切れ味によって食感も変わるので、包丁の切れ味は美味しさに大きく影響していそうです。
つまり・・・包丁一つで毎日損をしている可能性があるのです!
今日は、包丁を使って食品を美味しくする秘訣を、包丁のプロフェッショナルである貝印株式会社、広報担当の松永さんに訪ねて参りました!
1.美味しさに大切なのは日頃のメンテナンス
●包丁の切れ味による味覚の違いが明らかになりましたが、それでは美味しくするにはどうしたら良いでしょうか?
※包丁のメンテナンス 包丁の研ぎ方はコチラ(貝印株式会社のサイトへ移動)
松永さん「大切なのは、切れ味が悪くなったと感じる前に、定期的にメンテナンスをすることです。「切れ味が悪くなったな〜」と思う時はすでに相当包丁の切れ味は落ちているはずなので、「そこそこまだ切れるけれど…」という時にメンテナンスするのが大事なのです。そうすれば常に切れ味の良い状態が続いてることになり、刃に負担が掛からない使い方をすることができるんです。こうすることで、刃は長持ちし、包丁を長く使うことができます。」
2.根菜は角を取り、お刺身はワンストロークでサクっと!
●切り方自体は重要なんですか?
松永さん「切り方も重要ですね。例えば野菜の繊維を断って切るのと、野菜の繊維と同じ方向に切るのでは食感が変わってきます。どういう食感を残したいか、どのような調理に使うかによって切り方を変えるといいんです。」
松永さん「あと、面取りをする、なども和食の特徴の一つですね。例えば大根を輪切りにした時に、切断部分の角は鋭角ですよね?この鋭角部分をさらにくるっと取るのが、面取りです。これをすると、そこから煮崩れしないようになるんですよ。里芋も同様に面取りされるもので、和食を食べに行くと実はそうなってることに気づかれると思います。和食は本当細部まで丁寧な処理がなされています。」
松永さん「お刺身ですと、ワンストロークで切るというのが重要なポイントです。ご家庭にお刺身用の『柳刃包丁』が無い時は、刃元から切っ先まで刃の全体を使って切ると、1・2ストロークで美味しさを逃がさず綺麗に切れます。」
3.洋包丁・和包丁の違いは、刃の数と材質の違いにアリ
●そもそも包丁にはどれくらい種類があるのですか?
松永さん「包丁の分け方はいくつかありますが、洋包丁・和包丁で考えてみましょう。洋包丁・和包丁の大きな違いは、洋包丁が一般に両刃包丁なのに対し、和包丁が基本的には片刃包丁なところです。洋包丁・和包丁の中にも種類がいくつかあり、用途に合わせて使い分けます。」
●どうして片刃と両刃があるのでしょう?
松永さん「作られる料理の特徴といいますか、最終的に完成系がどこにあるか?によって変わってくるのだと思います。例えば、片刃を使うと素材の断面が綺麗になります。これは、素材を活かす・旨味を逃がさないという日本料理の特徴に合いますよね。」
松永さん「また、和包丁が片刃なのは、片刃である日本刀が元になって発展していったという歴史も関係ありそうです。」
●洋包丁・和包丁の種類についてはいかがでしょう?
松永さん「洋包丁で代表的なものは、『三徳』『牛刀』『ペティ』『パンきり包丁』などが多くの家庭で認識されているものです。牛刀は『シェフズ』とか『シェフズナイフ』と言われることもありますね。」
松永さん「和包丁には、『出刃』『柳刃(=刺身)包丁』『菜切り』『薄刃』なんかがあります。」
●それらはどう違うんですか?
松永さん「たとえば『菜切り』と『薄刃』というのが同じ用途で使われていて、関東型と関西型で多少形が違いますが、いずれも野菜を切る用途です。これらは刃の全体で切れるので野菜を切る際はとても切りやすいのです。白菜なんかもダダダダ…とスピーディに切ることが出来ます。」
松永さん「ほかにも、『牛刀』は先が尖っていて少し長めなのでお肉を切るのに適してたり、刃渡りが長いのでテコの原理を使ってかぼちゃなど硬いものを切るのに適しているなど、それぞれ特徴があります。」
後編では、最低限持っておきたい包丁の種類や簡単メンテナンス法をご紹介します!引き続きお読みください♪
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【プレスリリース:「味覚センサー」を使って可視化実験 包丁の切れ味によって味覚が変わる!? 味覚の変化も明らかに】
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