「自炊したい」「料理が上手になりたい。」そう思いたったとき、どこから勉強すればいいのでしょうか。料理の基本を体系的に学んだことがある人はそう多くはないはず。家庭科の授業の記憶もはるか遠く..です。
そんな人のために、まずは調理の基本中の基本、塩の効果についてまとめました。塩だけで調理して完成する料理があるくらいです。塩は調理技術の最小単位といってもいいかもしれません。
普段料理をする人でも、日々なんとなく行っている塩での調理。塩が素材にどんな効果を与えるのか、確認しておくとより料理に失敗が起きにくいです。一緒におさらいしてみましょう。
①塩味をつける
塩の一番の効果はもちろん、塩味をつけること。レシピで「塩少々」とか「塩をひとつまみ」などど指示されることが多いですが、塩少々は、親指と人差し指の2本でつまむ程度。約0.5g。塩ひとつまみは、親指と人差し指と中指の3本を使って、指の中腹あたりででつまんだ量で、1g程度です。
とはいっても指のサイズやつまみ加減は人それぞれ。一度自分の指でどれくらいつまんでいるか測ってみるといいですね。
②素材の美味しさを引き出す
塩には素材の美味しさを引き出す能力があります。旨味や甘味が引き出されるのです。スイカに塩をかけると甘味が強調されますし、出汁に塩分を加えると、旨味がより強く感じられます。
これを対比効果といい、1つの味覚が他の味覚を強める作用です。
特に旨味は、旨味単体では知覚しにくい味覚です。旨味を最大限活かすには0.6%の塩分を足すとうまくバランスします。
③水分を出す作用
塩には食材から水分を出す効果があります。
きゅうりやナスなど野菜に塩をかけて置いておくと、水分が出てきます。水っぽくしたくない料理、漬物などは塩で水分を抜いてから調理します。調味料の味も入り込みやすくなるからです。
食材の細胞膜の内と外で濃度に差異がある場合、薄い方から濃い方に水分が移動します。浸透圧という力によるものです。塩をかけたとき、食材の内側よりも外側の方が濃度が高くなるため、水が出ていくのです。
④肉・魚の下ごしらえに利用する
塩には臭みをとる効果があります。これは、塩により食材から水分が出ていく際、臭み成分も一緒に出るため。よって肉・魚から出た水分は拭き取って調理しましょう。鮮度の低い魚や、安めのお肉にはしっかりと塩をかけ10分以上置いてから焼きましょう。逆に鮮度のいい魚、美味しいお肉は塩をふってすぐ焼くほうがベター。放置すると、肉汁が出すぎてしまいます。旨味も飛んでしまいますのでお気をつけて。
また、保水する効果も得られるのが塩の不思議さです。肉・魚に塩をかけると、塩によってタンパク質が溶け、粘性を帯びた状態になります。すると火を入れたときに水分を保ちやすくなるのです。水分を内部に残すため、肉質がぷりっとします。
⑤食品の変色を防ぐ
緑色野菜を茹でるときに塩を使うのは、下味を付ける意味合いもありますが、特に緑色をきれいに出すためです。野菜の緑色を出しているクロロフィル(葉緑素)は長い加熱に弱いため、茹ですぎると色があせてしまいます。塩でクロロフィルを守るのです。
茹でるときは水に対してだいたい1~2%の塩をいれましょう。また、塩でりんごの黄変も防ぐことができます。0.5~1%程度の濃度の食塩水にいれましょう。りんごに含まれるポリフェノールの酸化を防ぐことができます。
⑥食品を保存する
魚介類の塩辛や、漬物、生ハムなど、塩漬けすることにより食品を保存加工する技術は昔から世界各地で使われてきました。食材が腐るのは、細菌やカビなどの腐敗菌が増殖するから。塩は腐敗菌が活躍するために必要な水分まで奪うため、腐敗を止め、食品の長期保存が可能となります。
以上、6つの塩の効果でした。
「料理は科学」だといいます。素材と素材が組み合わさったり、加熱したり冷やしたり、さまざまな化学反応によって料理が成り立つからです。
「なぜ塩をかけるのか」それぞれ意味合いがあることがわかりました。人間の身体及び、細胞の維持にに必要不可欠な「塩」日々、何気なく当たり前のように料理に使用していますが、塩の科学を押さえておくと、納得しながら料理することができますね。