寄生虫ダイエットが都市伝説ではなくなる日

20世紀最高のソプラノとまで呼ばれたかの著名なオペラ歌手、マリア・カラス。彼女が106kgあった体重を55kgまで落とし、美貌と美声でスター街道を駆け上ったのは有名なお話。奇跡の56kgダイエットを成し遂げたのは、サナダ虫を腸内で飼ったからと言われています。

まさかのペットですね。あまりにも信じられない方法なので、噂や都市伝説に過ぎないともされてきました。

寄生虫ダイエットの効果を世界で初めて科学的に証明

ですが今回、眉唾ものだった寄生虫ダイエットの効果が世界で初めて科学的に証明されました。群馬大学大学院医学系研究科の下川周子 助教と共同研究グループである国立感染症研究所の 久枝 一 部長らが、高脂肪食を与えてあらかじめ太らせたマウスに、ある種の寄生虫を感染させると、体重の増加が抑制されることを証明したのです。


あらかじめ1ヶ月間かけて高脂肪食を与え、じっくり太らせたマウスに寄生虫を感染させ ると、体重の増加が抑えられ、脂肪量も低下し、血中の中性脂肪や遊離脂肪酸が優位に低下しました。

寄生虫感染マウスはエネルギー代謝が増加

体重増加を抑えるには、カロリー摂取量が減るかエネルギー代謝をが上がるか2つのポイントがあります。1つ目のカロリー摂取量に関しては、寄生虫を感染したマウスは通常のマウスと比べて、食べた餌の量は変わりませんでした。

2つ目のエネルギー代謝について。寄生虫が感染すると、エネルギー代謝に関係する脂肪細胞内のUCP1というタンパク質の発言が上昇し、熱を生み出し脂肪細胞が脂肪を燃焼させ始めました。


脂肪を燃焼させる UCP1 が発現上昇するには、交感神経系の活性化、つまり神経伝達物質であるノルエピネフリ ンの増加が重要であることが知られています。
実際、寄生虫感染マウスの血中のノルエピ ネフリンの濃度を調べたところ、非感染マウスと比べてかなり高い量のノルエピネフリン の濃度が検出されました。また、寄生虫を感染させたマウスの腸内細菌叢を解析したところ、ノルエピネフリンを分泌させるような腸内細菌が優位に増加 していることが明らかになりました。


 これらの結果から、腸管に寄生する寄生虫がマウスの腸内細菌叢を変化させ、神経伝達物質であるノルエピネフリンを分泌するような特殊な腸内細菌を増加させること、それによって交感神経が優位になり脂肪細胞を熱産生へと働かせる UCP1 の発現を上昇させ、体重の増加を抑えるという一連の流れを明らかにしました。
寄生虫が腸に寄生すると、特殊な腸内細菌が増加し、エネルギー代謝しやすくなるんですね。

肥満は糖尿病、高血圧や心筋梗塞、脳梗塞などの原因にもなります。痩せる可能性の高いダイエット方法の研究がすすむと救われる人も増えそうですね!
ですが基本的には、寄生虫に頼らなくても済む体型を維持したいものです。

参考:群馬大学プレスリリース 寄生虫によるダイエット効果 〜世界で初めて科学的に証明される〜 
腸管寄生性蠕虫は腸内細菌に作用することで肥満を抑制する
Suppression of obesity by an intestinal helminth through interactions with intestinal microbiota

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