しびれ味ブームは必然だった!

唐辛子

日本は世界と比べると辛味の食文化がありませんでした。しかし、最近では激辛ブームも起き、日本人の味覚が変化してきたと言えます。そして2019年には麻婆豆腐や担々麺の影響で山椒や花椒の「しびれ味」が活況になっています。

今日はしびれ味及び辛味について、堀り下げたいと思います。


辛味は痛覚なのになぜ好きになる?

辛味は痛覚であるため、5基本味(甘味・塩味・酸味・苦味・旨味)には含まれていません。通常の味は食べ物に含まれる味成分が、舌の上の「味蕾」から味細胞に入ることで感じられます。しかし、辛味は味細胞に入りません。温覚や痛覚などの「触覚」で感じるので、5基本味には含まれていないのです。

普通「痛い」という感覚は好ましくないのですが、辛いもの好きは8割というデータさえあります。なぜこれほど人は辛いものが好きになるのでしょうか?

それは、人が新しい刺激を求める飽きっぽい生き物だからです。酸味は腐敗の味、苦味は毒物の味として発達したのに、いつの間にかこれらを多く含んだビールやコーヒーとして、美味しさを感じているのと同じです。酸味や苦味と同様に本来痛い・熱いはずの辛味も美味しい味と合わせて新しい味を作り出し、そこに新しい美味しさを感じているのです。酸味や苦味も単体で美味しさを感じないように辛味単体では美味しさを感じません。必ず他の味や匂いと結びついて美味しさを感じます。どのような味と辛味を結びつけるかはその人の食経験・食文化に左右されます。

では、日本人は辛味とどのような味と結びつけて美味しさを感じているのでしょうか?

ポイントは”旨辛”

日本人の味覚は旨味を美味しく感じる特徴があります。辛味に関しても実は、旨味と辛味のセットで美味しいと感じるのです。”旨辛味”は日本人にとってちょっと新しい味なので美味しく感じるのです。

花椒パウダー

ところで、辛味の中でも山椒・花椒のしびれる辛さと唐辛子の辛さは異なります。中国語では前者は麻(マー)、後者は辣(ラー)と呼びます。過去に唐辛子のブームは何度かありましたが、今注目されているのは山椒・花椒のしびれる辛さと旨味のコンビネーションです。本場の麻婆豆腐などの味に慣れてきて、麻(マー)の味を備えた”旨辛”好きが増えてきています。しかも今までよりも辛味のレベルが高いことが特徴です。味覚のグローバル化という流れからすると、今後辛味のレベルが再び下がることは考えにくいでしょう。今まで日本人の食文化に辛味はあまり入っていなかったのですが、”旨辛”という美味しさを多くの日本人が感じている以上、その食文化も変わったということなのです。

そういう意味では、昨今言われている”しびれ味”ブームも必然だったわけです。

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