日々忙しくてなかなか取れない疲労、つらいですよね。栄養ドリンクなどで凌いでも凌ぎきれないことも多くあります。面倒かもしれませんが、そんなときにこそ日々の食事を意識したいもの。
疲労時に食事に取り入れたい食べ物は、ずばり「出汁」です。
出汁は美味しいだけでなく、疲労回復の効果があるかもしれないと言われているんです。
継続的な出汁の摂取が疲労感を軽減する
味の素株式会社の研究[*1]では、中高年層の男女38人を、鰹出汁を摂取する群とプラセボ群に分け、出汁の入った(または入っていない)味噌汁を朝夕、二週間継続摂取させました。
その結果、鰹出汁を摂取し続けた群では、「眼の疲れ」、「抑うつ-落ち込み」が有意に低下することが示されました。更に疲労感を自覚している被験者では「疲労感」、「集中力」が有意に低下することも判明したんです。
この研究では鰹出汁が気分や感情に良い影響を与えるメカニズムについては明らかになっていませんが、継続的に摂取した結果であることから風味や香りなどによって一時的にリラックス効果が現れているのではなく、水溶性成分による作用であると推察されています。
また、別の研究[*2]では、成人女性31名を対象に鰹出汁に入った試験食を1週間非摂取期間を設けた後、朝夕1週間継続摂取させ、非摂取期間後及び摂取期間後に単純な計算問題を行なう内田-クレペリンテスト(UKP)を実施することで、単純作業による負荷への抗疲労効果やストレスに対する影響を調べました。
結果として、脳の疲労度合いを示すフリッカー値はUKP実施前に比べて非摂取期間後は有意に低下するのに対して、出汁摂取期間後では有意な変化が見られませんでした。
また、ストレス度合いを示す唾液コルチゾールについても非摂取期間後に比べて出汁摂取期間後の方がUKP実施後の数値が有意に低かったそう。
このように継続的な出汁の摂取は疲労やストレスに対して良い効果を与えることがわかっているのです。
単発的な出汁の摂取でも疲労感が軽減される
更に出汁の疲労回復効果は短期的な摂取でも効果があるという報告も[*3]。
研究では24名の男女を対象とし、鰹と昆布の合わせ出汁の摂取や香気を嗅いだ後、心拍数低下とリラックス状態を示す副交感神経活動の一過性上昇が見られました。
また、合わせ出汁の摂取後にUKPを実施した場合にフリッカー値低下の抑制が見られ、主観的な疲労度の軽減も確認されました。
出汁の有効成分であるとされていたのは、ヒスチジンやアンセリンなど、鰹節に多く含まれる水溶性の成分。しかし合わせ出汁でも効果があり、香気でも副交感神経活動が有意に上昇する効果があったことから、著者は「疲労の軽減はこれらの成分が消化・吸収された結果ではない」としています。
加えて、その他に関与する要素として食品に対する好ましさを挙げており、より多くの被験者を対象にしたり、出汁の摂取経験のない外国人を対象にした比較研究などが今後の課題になると述べています。
このとおり、出汁は美味しいだけでなく疲労に対して効果を発揮してくれる可能性がある様子。忙しくて出汁をとる時間がなくても、既製品を使えば味噌汁などで手軽に摂取できますから、食品の中では一番効率の良い疲労回復術となるかもしれません。
疲れたときは、出汁を積極的に摂ってみてくださいね。
参考文献:
*1:石崎 太一 , 黒田 素央 , 杉田 正明「鰹だし継続摂取が気分・感情状態, 特に疲労感に及ぼす影響」日本食品科学工学会誌 53(4), 225-228, 2006-04-15
*2:石崎 太一 , 黒田 素央 , 久野 真奈見 , 北面 美穂 , 早渕 仁美「鰹節だし摂取が単純作業負荷時の精神疲労・ストレスおよび作業効率に及ぼす影響」日本食品科学工学会誌 54(7), 343-346, 2007-07-15
*3:森滝 望 , 井上 和生 , 山崎 英恵「出汁がヒトの自律神経活動および精神疲労に及ぼす影響」日本栄養・食糧学会誌 71(3), 133-139, 2018