日本では、給食に必ず牛乳があることから、「牛乳信仰」とまで呼ばれてきました。これを、戦後の食生活の貧しさの名残だと批判する人もいれば、牛乳そのものの栄養を疑問視する人もいました。近年、果たして牛乳は体に良いのか悪いのか、悩める人も多かったのではないでしょうか。
1年ほど前に、チーズを食べる人ほど細いというアイルランドの研究がありました。
今回、医学雑誌『ランセット』に発表されたのは「牛乳と乳製品全般が体に良い」という結果です。それも、心血管系の病気に牛乳は大変良いそうなんです。
牛乳は1日3杯までが望ましい
『ランセット』に発表されたところによると、今回の研究の対象となったのは21ヶ国に住む35〜70歳の約13万6千人。およそ、9年にわたって研究は続けられました。
その結果、脂肪分を多く含むチーズであっても、それを食する習慣のある人は心血管系の病気にかかりにくいという結果が出たのです。量は1日「3ポーション」までが望ましいとのこと。
では、具体的に「3ポーション」とはどのくらいの量なのでしょうか。
数字にすると、1ポーションは牛乳1杯分、チーズならば15g、バターならば5gに相当します。1日3ポーションまでが理想というのであれば、これらの3倍というわけです。
乳製品を平均3.2ポーション摂取した人の死亡率が低い
9年にわたる研究は、乳製品の摂取量をグループに分けて行われました。
① まったく乳製品を摂取しない(28,674人)
② 1ポーション以下の乳製品を摂取(55,651人)
③ 1~2ポーションの乳製品を摂取(24,423人)
④ 2ポーション以上の乳製品を摂取(27,636人)
これらのグループの人々の死亡数、死因を疫学者が記録、分析。その結果、2ポーション以上の乳製品を摂取した人(1日平均3.2ポーション)の死亡率が最も低かったんです。その数値は3.4%で、乳製品ゼロの人の死亡率は5.6%です。
死因について見てみると、心臓に関係のない病気で亡くなった人は、もっとも摂取頻度が高い人たちは2.5%、乳製品ゼロ組が4%。心血管系の病気で亡くなった人は、前者が0.9%、後者が1.6%でした。
研究を率いたカナダのマックマスター大学では「牛乳の摂取は北米やヨーロッパよりも、低所得国の人々の健康により寄与する可能性が高い」としています。
もしかしたら、私たち日本人にとっての恩恵も薄いかもしれません。しかしいずれにしても、牛乳やチーズが好きな方にとってはうれしい研究結果ですね!
参考:
Latte e formaggi fanno bene alla salute
Association of dairy intake with cardiovascular disease and mortality in 21 countries from five continents (PURE): a prospective cohort study