薪焼きでステーキは美味しくなる!?肉の焼き方に科学のメスを入れてみた

撮影:中西一朗

お肉には様々な焼き方があります。数年おきに「○○焼き」という名前を目にしますよね。最近だと「炭焼き」「薪焼き」あたりが目立っていたのではないでしょうか。

そんな中で大注目なのが「薪焼き」。「薪焼き」という焼き方は、実は厚切り肉を焼くのにとっても適しているようなんです…!

薪焼きで焼いたステーキは旨味が高い

味博士の研究所では味覚センサー「レオ」を使い、厚切りステーキの焼き方について「炭焼き」と「薪焼き」を比較してみました。

味覚センサーレオ

レオは人工知能搭載の味覚センサー。ヒトが味を感じる仕組みを模倣したマシンで、私たちが味わう味覚を数値で出すことができます。

検証したのは牛肉の厚切り肉における薪焼きと炭焼きの基本5味(甘味・旨味・酸味・塩味・苦味)。

今回はステーキにおいて一番の魅力である、「旨味」の比較結果を見てみましょう。

このとおり、薪焼き肉のほうが旨味が高くなっています。差は0.2ポイントで、これは95%以上の人がわかるであろう数値。ポイント3.5以上ということもあり、かなり旨味を感じられるでしょう。

薪焼きと炭焼きは、薪火は高音で表面を焼ききり、炭火は緩やかな熱量でじっくり均一に火を通すという違いがあります。この「火の通り方」の違いが、旨味に影響するようです。

薪焼きの旨味が高いのはなぜ?

撮影:中西一朗

厚切り肉を焼くときのポイントは、大きく分けて「内部温度」と「メイラード反応」。この2つの加減によって旨味が変わります。

1. 内部温度について

肉には「アクチン」という水分を含むたんぱく質が含まれています。アクチンは加熱によって収縮し、水分(肉汁)を外に排出します。

肉汁を外に出してしまうと言うことは、旨味のもとが出て行ってしまうということ。アクチンが変性を開始するのは66℃なので、これ以上の温度になると旨味が下がってしまう可能性があるんです。

ただし、内部温度が低ければ良いということではありません。肉を加熱すると細胞内の水溶性成分が細胞外へ流出し、それが肉汁(旨味のもと)になるんですが、加熱が足りないと旨味が低い状態に。

2. メイラード反応について

メイラード反応は糖とアミノ酸の加熱によって発生する反応。お肉が焦げたときに漂ってくるかぐわしい香り……その瞬間、メイラード反応が起こっています。

糖とアミノ酸が結合して酸素や水と反応しながら変身すると「メラノイジン」と呼ばれる茶色の物質が生まれます。これが香ばしい風味やコクを生み出すんです。

メイラード反応は常温でも発生しますが、加熱することで速くなります。そして、155℃で最も活発に反応が起こると言われています。

薪焼きは高い熱量で表面を焼くため、内部温度は適正に、外側はメイラード反応でこんがりというちょうど良い塩梅になったのではないでしょうか。

撮影:中西一朗

厚切り肉を調理する工程は、もちろん「焼く」だけではありません。具体的には以下のような、色々な要素があります。

1. サシ(黒毛和牛などに見られる霜降り)か赤身か
2. 塩をふるタイミングは最初か最後か
3. 遠火、近火といった火の強さ
4. 焼き時間

これらの検証を、12月6日発売の食の専門雑誌「料理王国」にて、恵比寿のイタリアン「TACUBO」のシェフである田窪大祐さんとともに実施させていただきました。とくに「焼き時間」は田窪シェフも「実は悩みどころ」だったとか。その注目の結果は以下のとおりです。

1. サシのある牛肉の方が旨味が高くなった
2. 塩は、最初にふった方がコクが出る
3. 強火の近火が旨味が高い
4. 焼き時間、200gの塊肉なら10分

実はこの結果を田窪さんは普段の焼き方からしていたそう。一流シェフの焼き方は数値から見て正しかったと立証されたことにもなります。

詳しい検証結果は、料理王国にてぜひご覧ください。

> 食の専門雑誌『料理王国』公式サイト

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