アルコール入の料理、「調理後にはアルコール度数ゼロ」のウソ・ホント

香り付のためにワインが入っていたり、鶏肉を柔らかくする理由でビールに浸けたり、バナナフランベで炎を立たせるためにラムを使ったりと、アルコールを使ったレシピには事欠きません。

こうした料理に含まれる「アルコール成分」は、調理後にはどうなっているのでしょうか。火さえ通せば、アルコール分は「とんでいる」と思っていませんか?アメリカとデンマークの実験結果をご紹介します。

アルコールの沸点は78℃

水の沸点が100℃に対し、沸点が78℃のアルコールは、調理中にアルコール分がすべて蒸発している印象があります。水とエチルアルコール分を混ぜた液体に火を入れた場合、アルコールは水よりも揮発性が高いために、発生する蒸気に含まれるアルコール分が高くなります。「蒸留酒」と呼ばれるアルコールは、この原理を利用して生産されているわけです。

とはいえ、蒸気にすべてのアルコール分が含まれて調理した液体にアルコール分が残らないかといえば、答えはノー。その量はわずかとはいえ、1gのアルコールが7kcalという砂糖の倍のカロリーがあることを考えると、糖尿病で糖質制限をしている人には問題になってきますね。また、その他の理由でアルコールを摂取しない場合も、この結果は重要ではないでしょうか。

ちなみに、アルコール度14の「グリューワイン」を沸騰させると、アルコール度が5度まで落ちます。調理した料理内のアルコールはどうなっていくのでしょうか。

高温で調理してもアルコールは残る?

アメリカ合衆国外務省が行った実験では、グラン・マルニエのソース、牡蠣グラタン、チェリーのフランベ、ポットローストなどの料理から、残留アルコール成分を調べました。

その結果、85℃で2時間煮込んだポットローストのアルコール残留分がもっと少なく4%、調理の最終段階にアルコールを注ぐグラン・マルニエのソースの残留アルコール分が最も高く85%という大きな差が出ました。また、190℃で25分火を入れた牡蠣グラタンにも、40%のアルコールが残るという結果が出たのです。

そして、ショー的な理由で炎を立たせるために入れるアルコールに関しては、揮発して炎を発生させたあとに、平均して77%のアルコールが残ることも判明。

とはいえ、これらの料理が1人分ずつに分けられた場合には、アルコールの摂取量は1g前後という非常にわずかなもの。ワイングラス一杯のアルコール量がおよそ10g前後だという事実の前にはそれほど大きな影響はないようです。

蓋なしで調理したほうがアルコールが残る?

近年、デンマークの研究者たちがビールを使った10のレシピを対象に、調理後のアルコール量を調査しました。ビールの場合、アルコールの残留成分は非常に低く、0〜2.5%。量に換算しても、0.1g〜1gという微量であることが判明しています。

しかし、デンマークの研究班が出した驚きの結果は、蓋をして調理した場合と蓋なしで調理した場合のアルコールについてでした。

一般的に、蓋なしで調理した料理のほうがアルコールの残留量は低い、というイメージがあります。しかし研究結果は、蓋をして調理したソースに含まれるアルコール残留量のほうが低いというもの。

以上の結果から調理中のアルコール成分をあまり残したく場合は、あらかじめ調理に使うアルコールに火を入れてある程℃アルコール分をとばすか、調理をする際に蓋をするのが有効のようです。

参照元
Cucinare con l’alcol – Scienza in cucina – Blog – Le Scienze
Alcolici: come usarli nelle ricette | DireDonna
Le Scienze settembre 2017

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