コーヒーは豆を挽いてドリップして淹れるのが理想的ですが、時には丁寧に時間をかけていられない場合もあります。そんな時でも気軽にコーヒーを楽しめるのが、粉末タイプのコーヒーです。カップに粉末を入れて、お湯を注いでかき混ぜるだけで完成!実に気軽ですね。
でも、そんな考え事をしながらでもできちゃうような簡単なかき混ぜ作業をしているとき、とある現象が起きていることにお気づきでしょうか。
今日は粉末コーヒーを混ぜる時に起こる、地味だけど一度知ったら今後気にせずにはいられないであろう現象を取り上げてみたいと思います!
粉末コーヒーを混ぜると音が変わる
お湯に粉を溶かすためにスプーンで混ぜる時には、スプーンがカップに当たる音がすると思います。実はこの音、混ぜるに従って、だんだん音が高くなっていくことにお気づきでしょうか。
・・・そんなこと気にも留めたことがないよ!!ってぐらい、地味ですね。ええ、地味です。
でも、ぜひ試してみてください。だんだんとキンキンとした金属音、すなわち高音成分が増えていくように感じられることかと思います。(※聴力の個人差によって程度は異なります。)
しかも面白いことに、
・粉末コーヒーを溶かすときは、音が高くなる
・粉末ココアを溶かすときも、音が高くなる
・砂糖は溶かすときは、音は変わらない
・塩を溶かすときも、音は変わらない
のです。どんな粉でも溶かせば、必ず音が高くなるわけではないのです。
これは何故だかお分かりになるでしょうか!?
音が変わる秘密は◯◯にあった!
この「粉末コーヒーを混ぜているときにスプーンがカップに当たる音が変わる」という現象に注目した千葉科学大学の塚本浩司教授は、この音程変化が何に由来するのかを調べる実験を行いました。
【実験1】カップの温度変化が原因なのでは?→NO!
はじめは、カップがお湯で温められることが原因だとして、96度のお湯と22度の水を、カップが温まるまでかき混ぜた時の音程変化が調べられました。ところが、両者に顕著な差はありませんでした。
【実験2】コーヒー以外の粉末を溶かした時にも変化するか?→YES!
次に、これが粉末コーヒーに特有なものかを調べるために、粉末ココアやコーヒー用のクリームパウダーを溶かした時の音程変化が調べられました。その結果、粉末ココアやクリームパウダーにおいても、コーヒーと同じように溶かすにつれて音程が変化していくことが確認できました。
【実験3】粉末以外を溶かしても変化するか?→NO!
さらに、紅茶のティーバッグをお湯に浸した場合の音程変化が調べられました。ところが紅茶がだいぶ染み出しても、音程に変化は見られませんでした。溶けたものの濃度が高くなれば音が変わるわけではないことや、音程変化は粉末に特有の現象であることが考えられました。
【実験4】砂糖や塩でも変化するか?→NO!
そこで、粉末なら全て同じような現象が引き起こるのかを調べるために、砂糖や塩を溶かした場合の音程変化が調べられました。ところが、砂糖や塩では音程変化が見られませんでした。
【実験5】泡が立つことが関係するのか?→YES!
温度変化でもない、濃度でもない、単に粉末であれば良いわけでもない……。やや実験に行き詰った中、最後に着目したのは「泡が立つこと」でした。これも普段は気にならないことですが、コーヒーや粉末ココアを溶かす時には、よく見ると小さな泡が立つような様子が観察できます。
そこで泡が立つことが関係するのかを調べるために、炭酸飲料や泡の立つ入浴剤をかき混ぜた時の音程変化が調べられました。結果はビンゴでした。炭酸飲料や泡の立つ入浴剤においても、コーヒーのように音程の変化が起きたのです。
これらの実験から、コーヒーをかき混ぜるときにスプーンの当たる音が変化するのは、かき混ぜ初期には液体中に空気が含まれていることで音が吸収されてくもった音になっているのが、かき混ぜていくうちに空気が外に逃げていくことでスプーンの金属音が復活していくためだと考えられました。発見ですね!
いかがでしょうか。とても地味な現象ではありますが、本当にそうなのか、試してみたくなりませんか。カップスープではどうなのか?粉末のお茶ではどうなのか?色々気になってきますよね。
お子さまがいるかたはご一緒に、夏休みのプチ自由研究として、色々なものを溶かす時の音程変化を調べてみるのも良いかもしれません!