揚げ油を使い回したい!
揚げ物では油を大量に使うので、同じ油を何度か使いまわせたら節約になりそうですよね。一方で、同じ油を何度も使っていると、揚げ物の味に影響が出たり、油の質が悪くなるという話も耳にします。
実際のところ、揚げ油はどのくらい使い回すことができるのでしょうか。実は、”ある方法”を使えば、使い回しの油で揚げ物がおいしくできるかどうかを揚げる前に判断できるようです!
油を味見すれば揚げ物の出来が予想できる?
日本調理学会の「揚げる・炒める分科会」の研究者たちは、揚げ油は何回まで味に影響がなく使いまわせるかを調べるために、いくつかの実験を行いました。
最初の実験では、冷凍食品のフライドポテトを使って、油の合計加熱時間と風味の関係が調べられました。油を180℃に加熱し、加熱から1時間後と6時間後に50gのフライドポテトを揚げて、揚げ前の油自体と揚げたポテトの味の両方を評価することを数日続けました。油の味の評価は、暫定油脂分析試験法と呼ばれる試験で使われる次の5つの中から評価され、揚げ前の油が「風味3」になったら実験終了です。
(フライ油の使用限界に関する研究(1)よりキャプチャ)
その結果、油の合計加熱時間が16-22時間ほどまでの油であれば、ポテトを美味しく揚げられることが分かりました。油自体の味が風味3に至ると同時に、ポテトの評価も落ちることも分かりました。また、油の加熱直後よりも、油を加熱し始めてから3-5時間後に揚げたポテトの方がまろみがあって美味しい傾向にあったようです。
さらに別の実験では、魚(さわら)や肉(鳥ささみ)、じゃがいもの揚げ物についても調べられました。170℃に加熱した油に、15分おきにこれらの食材50gずつを連続して揚げて、揚げ前の油の味が「風味3」になるまでの揚げ回数を調べました。
その結果、さわらは8回、ささみは9回、じゃがいもは14回揚げた段階で、油が風味3になることが分かりました。また、おいしく食べられるのは、いずれも4-5回までの使い回しだったようです。さらに、1回目よりも2-3回目に揚げたものの方がフライ香がつくことによって美味しくなったといいます。この実験でも、油単体が風味3に近づくにつれて、揚げ物の味も劣化していくことが分かりました。
これらの実験に共通して言えるのは、油の味=揚げ物の仕上がりの味ということです。ですので、揚げ油を使いまわせるかどうかは、使い回す油自体を味見して風味を確認すればわかる、のです!油を舐めてみて、風味4,5であれば揚げ物に使える、風味3以下、つまり「油っぽい!油臭い!重い!」と感じた場合には新しい油を使ったほうが良い、といえるでしょう。
油を使い回すと酸化する?
油を使い回すことに対する心配の一つに「古い油は酸化して質が悪くなっている」ことがあるのではないでしょうか。
先ほどの実験では、風味3と評価された油の酸化の具合についても、同時に測定が行われました。油の酸化具合を調べる指標には、アニシジン価(AnV)、カルボニル価(CV)、酸価(AV)、過酸化物価(POV)などのいくつかの指標があり、これらの値が調べられました。
その結果、風味3の油の酸化の度合いは、安全性の面では全く問題がない数値であることが分かりました。こうした点からも、油を味見してみて風味3よりも良い評価であれば、揚げ物に使いまわして問題がなさそうだと言えるでしょう。
家で揚げ物を作るときは、ぜひ参考にしてみてくださいね!