かわいい顔して侮れない!フキノトウの驚くべき素顔に迫る

「春の使者」に秘められたパワー

北国でも雪解けがはじまり、かわいい「春の使者」がひょっこり顔を出しています。そうです、フキノトウ。ほろりと苦い独特の風味は、早春のよろこびを口の中にも運び込んでくれます。

フキノトウはキク科の多年草であるフキの蕾。蛇足ですが、フキは雌雄異株の植物、つまりフキノトウには雄花と雌花の2種類があることは意外と知られていないかもしれませんね。

季節を楽しむための嗜好品と思われがちですが、侮ることなかれ。驚きの効能をご紹介します。

フキノトウでメタボ予防?

なんと、フキノトウには肥満を抑制する効果があるという研究結果が報告されています[※1]。

フキノトウから抽出したエキスをマウス由来の細胞に添加した実験では、脂肪細胞への分化が顕著に抑制されることが観察されました。中性脂肪の合成に関与する酵素の活性を測定した結果も、その効果を裏付けています。

また、マウスに高脂肪食を与えた実験では、飼料にフキノトウの抽出エキスを加えることで体重が増加しにくくなることがわかりました。「高脂肪食のみ」を与えたマウスと「高脂肪食+フキノトウエキス」を与えたマウスを比較すると、後者のグループで血中総コレステロールと血糖値も低い結果に。細胞レベルだけでなく、生体内でも肥満抑制効果があることが明らかになりました。

こうした活性をもつ成分としては、ポリフェノールの一種である「ケルセチン配糖体」やフキ特有の香りのもとであるセスキテルペン「フキノリド」などが候補と考えられています。内臓脂肪への影響まではまだ解明されていませんが、フキノトウのメタボ予防効果には期待がもてそうですね。

恐るべし!フキの底力

また、フキノトウに含まれるポリフェノールやセスキテルペンは高い抗酸化作用をもつことも判明。フキノトウに限らず、フキの抽出成分についても調べられており、その抗酸化作用が酸化ストレスから脳の神経を守り[※2]、気管の炎症を抑える[※3]といったマウスの実験結果も出ています。

さて、フキノトウがたくさん収穫できたときは、日持ちのするフキ味噌にすると重宝しますよね。うれしいことにフキ味噌は長期保存をしてもその抗酸化力が落ちないとのこと[※4]。

さらに、近年発見されたフキ抽出物の驚くべき効能は、マウス由来の精幹細胞の増殖能力を高めるというもの。フキ抽出物を添加して培養された生殖細胞は移植後も正常に精子を形成することが確認されたことから、男性不妊治療技術の進歩が期待されます[※5]。

ちょっとワルなところも

しかし、よい効能ばかりではありません。フキの葉をそのまま凍結乾燥したものを5%含む飼料をマウスに与えた研究では、むしろ酸化ストレスが高まることがわかりました。これはフキに含まれるピロリジジンアルカロイド類によるものだと考えられています[※6]。ピロリ?ジジン?と疑いたくなりますが、タイピングミスではありませんよ。

とはいえ、日本ではこれまでフキのピロリジジンアルカロイド類による健康被害は確認されていないそうです[7]。フキ独特の苦み中毒の筆者は、下ゆでせずにそのままフキ味噌を作ってしまうのですが、気になる方はしっかりアク抜きをしましょう。ピロリジジンアルカロイド類は水溶性なので、ゆでることで減少させることができます。

日本は南北に長いので、フキノトウの時期が過ぎてしまっている地域もありますが、次はフキが旬を迎えます。ぜひ春限定の味覚を楽しんでみてくださいね。

参考:
※1 フキノトウの抗肥満効果に関する研究
※2 Protection by Petaslignolide A, a Major Neuroprotective Compound in the Butanol Extract of Petasites japonicus Leaves, against Oxidative Damage in the Brains of Mice Challenged with Kainic Acid
※3 Suppressive effect of Petasites japonicus extract on ovalbumin-induced airway inflammation in an asthmatic mouse model
※4 フキノトウ由来生理機能成分の評価と発酵食品への応用
※5 Petasites japonicus Stimulates the Proliferation of Mouse Spermatogonial Stem Cells.

※6 Japanese Butterbur (Petasites japonicus) Leaves Increase Hepatic Oxidative Stress in Male Rats

※7 野菜や山菜に含まれるピロリジジンアルカロイド類のリスク管理の必要性に関する考察

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