かつてより、包丁の切れ味が悪くなると食べ物の味も悪くなることが感覚的に知られていました。
しかしどのくらい味が変わるのか、あるいはどのように変わるのでしょうか。
そこで今回は、「包丁の切れ味で食べ物の味がどう変わるか?」を徹底検証してみました!
1)仮説〜実験
実験は、「切れ味の良い新品の包丁」と3種類の「切れ味の劣化した包丁」、計4本の包丁をそれぞれ使って切った食べ物の味を味覚センサーで測定することで行いました。
今回切れ味の劣化は、包丁をまな板に27,000回、54,000回、108,000回切りつけることで再現しました。
※参考程度ですが、1食300回×1日3回×1ヶ月30日とした場合は1ヶ月で27,000回切ることになります。
また、味の違いが変わる理由を「切れ味が悪くなると切断面の細胞が壊れるから」と仮定して、実際の切断面を観察してみました。
2)切れ味の違いによる、表面の違いは明らか
最初に、切断面を観察してみます。
まずはマグロです。
新品の包丁で切った場合はコチラ
54,000回まな板に切りつけた包丁で使用した場合はコチラ
新品の包丁で切った場合は、切断面が滑らかでミラーのように輝いていますね。
劣化包丁で切った場合は、明らかに断面が壊れていてギザギザになっていました。
次にトマトです。
新品の包丁で切った場合はコチラ
54,000回まな板に切りつけた包丁で使用した場合はコチラ
劣化した包丁で切った場合、断面から中身がこぼれ出ていました。
最後にピーマンです。
新品の包丁で切った場合はコチラ
54,000回まな板に切りつけた包丁で使用した場合はコチラ
劣化した包丁で切った場合、切れ味が悪いためきれいな輪っかにならず割れてしまいました。
3)切れ味が変わると旨味や雑味に影響がある
切れ味の劣化した包丁を使うと、切断面が明らかに汚くなることが確認できました。
こうした切断面の汚さは、味に影響するのでしょうか?
次に、味覚センサー「レオ」を使って、数値化実験してみました。
結果はこうです。
マグロにおいては旨味が落ちて、苦味が増えて行く様子が見てとれます。
苦味が増えるのは、旨味成分が流れ出た結果として、味の相互作用の影響により本来ある苦味がより強く感じられるようになったためだと考えられます。
※味の相互作用:味覚が相互に影響し合うことで、ある味覚が他の味覚に与える作用のことを言う。よく知られている事例では、スイカに塩をかけると甘くなる。(塩をかけたことで甘味をより強く感じる効果など)
トマトは数値変化は少ないものの、甘味と旨味が減って行く傾向が見られます。
これはトマトの中身がこぼれることで、旨味や甘味が流れ出てしまうことが考えられます。
ピーマンでは、苦味と酸味が増して行く傾向にあることが分かります。
これは切れ味が悪いことで、ピーマンの断面を潰してしまい苦味成分が出てくるためだと考えられます。
つまり今回の実験から、少なくとも「舌にあたった瞬間の味覚に影響する」ということが言えるのではないでしょうか。
以上の実験より、「包丁の切れ味劣化は食材が持つ味覚そのものをも劣化させてしまう」ということが明らかとなりました!
包丁の切れ味は、本当に食べ物の味に影響していたんですね…!
これはあなたの家の包丁とも無関係ではなさそうです。
食べ物のおいしさを保つ為に、一体包丁をどのように扱うべきなのでしょうか?
詳しくはこちらを見てね!
【プレスリリース:「味覚センサー」を使って可視化実験 包丁の切れ味によって味覚が変わる!? 味覚の変化も明らかに】
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