近年、ちらほら聞く「熟成そば」というそばの種類。その名のとおり収穫してから寝かせたものを言うそうです。
そして、今年はこの熟成そばが来る!という噂があるとかないとか。
熟成モノの代表格である熟成肉は、一般的に微生物の働きによってたんぱく質がアミノ酸に変わり旨味が増す傾向にありますが[*1]、そばも旨味が増したりするのでしょうか。
熟成そばの味を味覚センサーで分析してみました。
熟成そばの味を味覚センサーで分析
早速、味覚センサーレオを用いて、熟成そばの味覚を分析していきます。レオはヒトが味を感じる仕組みを模した、AI搭載の味覚センサーです。
比較対象として、普通のそばも用意しました。ただ、そばの味はモノによってかなり異なるため、数種類のそばから割り出した平均値を使用しています。
まずは、基本5味(甘味・旨味・酸味・苦味・塩味)を総合的に分析。
こうして見ると、やはり熟成そばは平均的なそばに比べて旨味が強いですね。
平均的そばと熟成そばの旨味とコクを比較
旨味だけを比較すると以下ようになっています。
数値としては0.2ポイント以上、ほとんどの人が食べてわかるであろう有意差です。
そばに関しても、たんぱく質がアミノ酸に変化すると言われており[*2]、そのため平均的そばに比べて旨味が強く出たと考えられます。
また、この基本5味(甘味・旨味・酸味・苦味・塩味)からコクも出してみました。
コクは「味の総和」のことで、基本5味(甘味・旨味・苦味・塩味・酸味)がバランスよく含まれていることで感じられます。
平均的なそばに比べて熟成そばは、有意差というほどではないものの、甘味や塩味も強めです。そのため味のバランスが平均的そばより良くなり、コクの数値が高くなったのでしょう。
コクに関して詳しくは「料理の「コク」って何?コクは数値化できる!」の記事もご覧になってみてください。
おまけ:マグロと熟成マグロも分析してみた
熟成といえば、熟成マグロも気になる熟成シリーズのひとつ。こちらに関しても味覚センサーで分析しましたので、結果をご紹介します。
まずは基本5味(甘味・旨味・酸味・苦味・塩味)のチャート図から。
こちらも味の違いが結構出ていますね。
ほとんどの人が判別できるであろう有意差は、甘味・酸味・旨味の3つの味。食べてみると、「マグロの味がしっかり出ている」と感じられるかもしれません。
そして、基本5味(甘味・旨味・酸味・苦味・塩味)から算出したコクがこちらです。
差は0.2ポイント以上。同じように有意な差と言えますので、コクが強く深い味わいに感じられるはずです。
熟成モノは美味しいのか?
人それぞれ、食体験によって「この食品はこういう味」というイメージが脳に刻まれています。そのため、熟成モノを食べた際に違和感があったり、「美味しくない」と感じてしまう人もいるでしょう。
熟成した食品のほうが旨味やコクが高くなる傾向にあるとはいえ、一概に「熟成したほうが美味しい」と言えないのが難しいところ。独特の風味もありますしね。
なので、熟成されたものに関しては、従来の印象にとらわれず「新しい食べ物」として味わうことで、熟成された食品ならではの美味しさを認識しやすくなるのではないかな、と思います。
熟成そばや熟成マグロは提供している店舗が少ないためまだ珍しい存在ですが、熟成肉のように広まっていく可能性もあるかもしれません。今後に注目ですね。
※本記事は2019/2/15にめざましテレビで放送された、当社が保持する味覚センサーレオの研究結果を元とし、記事用に再構成したものです。
参考:
*1 食肉用語の解説 食肉の熟成 日本食肉研究会
*2 日曜庵のこだわり そば㐂り 日曜庵