くさやが強烈ににおうのはなぜ?腐っているから?

日本には様々な珍味がありますが、中でも独特で強烈なにおいで有名なのが「くさや」。すごくライトな表現では、「腐った魚のにおい」などと言われることがあります。

あの強烈なにおいの原因はいったいなんなのでしょうか。また、くさやは腐っているのでしょうか。今回はそんな疑問を解決します。これを読めばあなたもくさや博士初級ライセンスを獲得できるかもしれません。

くさやのにおいの元は微生物が生成する成分

くさやは干物の一種。切り開いて内臓を取り除いた魚を「くさや汁」に10時間以上漬けて、天日干しや通風乾燥させることで出来上がります。

くさやを作るにあたって要となる「くさや汁」に様々な微生物が含まれており、これがにおいの原因となる成分を出すそうです[*]。

くさや汁に含まれている微生物は、くさやの種類にもよりますが、コリネバクテリウム属(Corynebacterium)や螺旋菌(Marinosρirillum)を代表に、他にもシュードモナス族(Pseudomonas)やモラクセラ(moraxella)といった聞きなれないようなものが存在します。

これらの微生物が生成する物質がくさやのにおいに関係してくるようです。におい成分について、アンモニアや酪酸、バレリアン酸などの有機酸、揮発性イオウ化合物が重要とされています。

なお、味との関連はあまり明らかになっていないそうです。

どちらかといえばくさやは腐っていない

くさやが腐っているのかの話の前に、「腐っているとはなにか」を確認しておきましょう。食品が腐るというのは、微生物の分解によって食品が劣化することを指します。これを「腐敗」と言います。

同様に微生物の分解が起こり、食品が別の食品に変化することは「発酵」と言います。例えば納豆やヨーグルトは発酵食品ですね。

驚くべきことに、腐敗と発酵は表裏一体[*]。食品や微生物、微生物の生成する物質の違いは、腐敗と発酵で明確な違いはありません。

腐敗と発酵は人の価値観に基づいたもの。人間にとって有益なものを発酵、有害なものを腐敗と呼んでいます。

では、微生物が製造に関係してくるくさやは腐敗なのでしょうか。それとも発酵なのでしょうか。これは、くさが好きな人にとっては発酵、嫌いな人には腐敗となるといえます。ただ、人が食べることができる、食べても健康を害することが少ないことから、どちらかというと発酵に近いでしょう。

なお、発酵食品と言えど、長期間放置すればくさやも腐ります。しかし、先述のコリネバクテリウム属が一定数以上含まれたくさや汁で作られたくさやは、他の干物に比べて倍近く日持ちが良いそうです。

人それぞれではありますが、くさやを食べるとすれば、お酒を飲んでいるときでしょう。くさやに加えて、今回の豆知識を酒の肴にお酒を味わってはいかがでしょうか。より豊かなお酒の場となるはず……です。

参考:
*「発酵と腐敗を分けるもの―くさや、塩辛、ふなずしについて―」日本醸造協会誌. 106(4), 174-182, 2011.

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