今の抹茶は「4代目」!?抹茶は長い時間をかけて進化していた

日本人にも外国人にも人気の高いフレーバーである抹茶味。抹茶スイーツや抹茶ドリンクなどの渋めの緑色を目にすると、思わず食欲をそそられますよね。抹茶といえば、苦味と旨味、そして甘味があるのが特徴的で、料理やお菓子などさまざまな食べ物と合わせやすい味をしています。

しかし、抹茶は昔からこんな万能な味をしていたわけではありません。実は、今の抹茶は進化を遂げた姿だったんです!今と昔の抹茶の違いに迫ってみましょう。

抹茶の歴史は4つの時代に分けられる

お茶メーカーの伊藤園の報告によれば、抹茶の歴史は茶葉の状態の違いや使用器具の違いから、大きく4つの時代に分けられるようです。

第一期:800-1200年頃。茶葉は「餅茶」。粉砕には「薬研」を使用。
第二期:1200-1300年頃。茶葉は「露天栽培てん茶」。粉砕には「薬研」を使用。
第三期:1300-1600年頃。茶葉は「露天栽培てん茶」。粉砕には「切線主溝型茶臼」を使用。
第四紀:1600〜現代。茶葉は「覆い下てん茶」。粉砕には「平滑周縁型茶臼」を使用。

第一期の餅茶(へいちゃ)というのは、茶葉を煮た(or蒸した)あとに、餅をつくように臼と杵を使ってついたものを乾燥させたものです。一方で、第二期以降のてん茶は、茶葉を蒸したあとに、冷却して乾燥させたものです。その後、それぞれの粉砕器具で細かくすることで、お抹茶パウダーができあがります。

この茶葉と粉砕器具の違いによって、抹茶の様子は全然変わってくるのだといいます。

(1)昔の抹茶はただ苦いだけだった!?

抹茶はミルクや生クリームなどの乳製品との相性が良いですね。これは、抹茶の旨味とミルクの甘味の組み合わせがおいしさを引き立てることが関係しています。以前、味博士の研究所でも、抹茶生クリーム抹茶ラテの味を味覚センサーレオで測定したことがあります。(抹茶の味をより客観的な数値で表現するには、味覚センサーレオでの測定がおすすめですよ!)

ところが、昔の抹茶は苦味のほうが圧倒的に強かったといいます。先の報告では4つの時代の抹茶を再現して試飲テストが行われました。その結果、 第一期の抹茶は苦味が強く、第二期の抹茶から旨味が出てきて、第三期は渋みやすっきりとした旨味、第四紀は甘味と旨味が強いという違いがあったようです。つまり甘味や旨味という抹茶の味の特徴は、比較的最近できたものだったのです。

こうした味の違いの理由には、餅茶とてん茶の違いもありますが、栽培方法の違いが大きく関係しています。昔の露天栽培(日に当てて育てる方法)では、旨味の成分となる「テアニン」という物質から、苦味の成分となる「タンニン」という物質が作られることで苦味が強くなります。一方で、日光を遮断する覆い下栽培では、テアニンからタンニンが作られにくくなるため、旨味が強くなるというのです。

(2)昔の抹茶は茶色くてザラザラしていた!?

さらに、同じく4つの時代の抹茶を再現したテストでは、お湯に溶かした時の様子も違っていました。まず大きく違いのは、色です。第一期は茶色、第二期は緑色、第三期も緑色、第四紀は濃い緑色をしていました。抹茶といえば緑のイメージが強いですが、昔は茶色い飲み物だったのですね(今だとほうじ茶ラテと間違えてしまうかもですね…!)

また、粉砕方法の違いによって、粒の大きさも違いました。薬研を使っていた第一期と第二期はそれぞれ約252μmと約148μmなのに比べて、茶臼を使うようになった第三期と第四紀は、それぞれ約8.4μmと7.7μmでした。第一期や第二期は、第三期や第四紀と比べて10倍も大きい粒をしていたのですね。

人の舌は30μm以上だとざらつきを感じるため、昔の抹茶はザラザラしていたようです。粒の大きさはお湯への溶けやすさにも影響し、薬研を使ったものはお湯に溶かしてもすぐに沈殿する一方で、茶臼を使ったものは溶け込みが良かったといいます。

このように昔の抹茶は苦くてザラザラしていたようですが、昔の人は抹茶を眠気覚ましや消化を助ける薬として利用していた側面が強く、味わいは二の次だったのかもしれません。そんな薬的な立ち位置だった飲み物が今では世界中で大人気の味になっているのだから驚きです。抹茶は今後、世界進出してくことで、さらに進化を遂げていくかもしれませんね!

参考:
中世以前の抹茶の粒度と味

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