「抹茶味」と抹茶のギャップ
主にスイーツの分野で着々と勢力を拡大し続けている抹茶。店頭には様々な「抹茶味」が陳列されており、外国人も「抹茶味」を求めて日本にやってくるような時代となりました。それに伴い、「抹茶味」に偏った愛情を示す抹茶フリークの頭数も増えています。
しかし、いざ抹茶フリークの人々が真の抹茶を求めて京都に行き、本場のお抹茶を口にするとどうでしょう。
「思ったより・・・結構苦い!!」
「あれ、抹茶って甘くなかったんだ・・・」
本場のお抹茶とのファーストコンタクトの多くはこのように「・・・」を含まざるを得ないもので、人によっては自身の肩書きを「抹茶味フリーク」にマイナーチェンジすることもあるとか。
さらに、中には、
「なんか、海藻みたいな味がするね・・・?」
という感想もあるようです。私の周りの複数の抹茶味フリークたちがそのように述べていたため、これは単に個人の味覚音痴という話でも済まなさそうな問題です。思ったより苦くて甘くないのは、お菓子のようにお砂糖が入っていないから分かるものの、海藻っぽいというのは不思議ですよね。
「抹茶味」は、どうしてお抹茶と違うのか。なぜ海藻みたいな味なのか。
今日はそんな抹茶フリークたちのハテナに迫ってみたいと思います!
抹茶と海藻に共通する旨味成分がある
抹茶は、碾茶(てんちゃ)と呼ばれると呼ばれる茶葉からできています。通常の緑茶の茶葉は日光を当てて栽培されるのに対し、碾茶は日光を遮って栽培されるのが特徴です。
日光を当てられずに育つと「テアニン」という旨味成分が増えていきます。実はこのテアニン、海藻などに含まれる旨味成分である「グルタミン酸」と物質としての形が似ています。旨味成分は人の舌の上にある「旨味受容体」というセンサーで感知されますが、構造が似ているため、どちらも同じような「旨味」として感知されるようなのです。つまり、海藻の旨味成分と、抹茶の旨味成分は似ているのです。
お茶を点てると旨味がグンと引き立つ
本場のお抹茶を点てる時も、市販のお菓子を「抹茶味」とする時も、茶葉や価格に差はあれど、碾茶から同様に作られた抹茶を利用します。ただし、「抹茶味」のお菓子が作られるときは、抹茶が粉末の状態で加えられたり、すばやく溶かされたりしています。これでは、テアニンの旨味が引き出されにくいです。
一方で、お抹茶を点てるときは、80℃くらいのお湯を少量ずつ加えて時間をかけて点てていきます。この過程ではテアニンの抽出が十分に行われるため、海藻っぽい旨味が際立ちます。つまり、製造・抽出過程の違いによって、「抹茶味」のお菓子よりも本場のお抹茶のほうがテアニンの味がよく出てくるのです。
抹茶の茶葉がそもそも海藻の旨味に似たテアニンを多く含んでおり、そしてお抹茶を点てるときにこそテアニンの味がじわじわと出てくる。これが、本場のお抹茶が海藻っぽい理由の一つなのでした。この海藻っぽさは、抹茶本来の味わいとも言えるでしょう。抹茶フリークから抹茶味フリークに改宗した方も、たまには本場のお抹茶を飲んで、なんとも形容しがたい抹茶の奥深さを舌に焼き付けましょう!