犬と人に間に立ちはだかる「壁」
どんなに愛犬に愛情を注ぎ、時間を共にしていても、どうしても越えられない壁があります。その名も、「ドッグフードの壁」。通常、人がドッグフードを口にすることはありません。どんなに愛犬と一心同体になった気でいても、ドッグフードの美味しさだけは、いつまでたっても共有することができないのです。
しかし、科学の視点があれば。人にもドッグフードの美味しさが、少しだけ分かるかもしれませんよ!
おいしさの秘密は「色」にアリ?
犬はドッグフードをどのようにおいしいと感じているのでしょうか。犬の味覚は人の味覚とは違うため、食事においては「いぬのきもち」になるのは難しいことです。
でも、ずっと見つめていれば、何かひらめくかもしれない。そう思い立って小一時間、ドッグフードを見つめていると、あることに気づき始めます。
そう、ドッグフードは大抵の場合、茶色がかった色だということ!!
さまざまな食品は、加熱すると茶色くなります。たとえばお肉、ご飯のおこげ、パンのトースト。そして大抵の場合、茶色いものはおいしい。
こうして全てが繋がり始めます。もしかすると、ドッグフードのおいしさも、この「茶色」に隠されているのではないか!?と。
ドッグフードと肉に共通する「メイラード反応」
お肉やご飯のおこげの茶色には、科学的な共通点があります。これらは、「メイラード反応」と呼ばれる反応が起きた結果、茶色くなっているのです。メイラード反応とは、糖とアミノ酸の成分が結びついてできる複雑な反応であり、様々な食品を加熱していく過程で発生します。そして、この結果、香ばしさが増したり、「メラノイジン」という健康効果も高いと言われている成分ができあがります。
実は、ドッグフードも、製造中に高温加熱処理をする過程でこのメイラード反応が起きていることが知られています。さらに、犬を対象に、メイラード反応を起こす前と起こした後の成分ではどちらを好むかを調べた実験では、10頭中7頭がメイラード反応を起こした後の成分を好むことが分かりました。もちろん実験だけでは一概に言えませんが、ドッグフードのおいしさの一因は、このメイラード反応にあると考えられるのです。
このように、人と犬には「メイラード反応をおいしい」と感じる共通点があります。犬と一緒にご飯を一緒に食べるときは、メニューを焼肉や焼きおにぎりにすることで、隣でドッグフードを食べる犬の気持ちに少しだけ近づくことができるかもしれませんよ!
参考文献:アミノ酸由来メイラード反応生成物の抗酸化活性および犬に対する嗜好性の検討
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