牛肉に対する永遠のテーマそして探究心
いかにして安い牛肉を美味しくするか…これは我々、牛肉を消費する人種の永遠のテーマですよね。牛肉の下ごしらえや焼き方次第で高級肉のように…といったテーマの企画はいたるところで目にします。
牛肉の銘柄、飼育、保存方法、下ごしらえ、焼き方…いったいおいしい牛肉とはなんなのか。
ああ〜牛肉のことで頭がいっぱいだぁ〜
そこに突如として耳より情報が!?
そんなことを考えながら先日、歯医者さんに行くと隣のおじさまがまさしくその話をしていました!
ちなみに私が通っている歯医者さんの先生はなかなかそのマスクの下の端正なお顔の全貌をお見せになりませんが、超美人!!きっと、そのマスクの下のお顔を一目見ようと、歯磨きせずに甘いものをいっぱい食べて足繁く通うおじさまたちもあまたいることでしょう…
そんなことを想像しながら、しばしやり取りにお付き合いください。
ギィーーッン(いや、全然気にするほどではないよ。)ジョーーーっ
な、な、なんということでしょう!私の潜在意識が引き寄せたのでしょうか?たった今、歯医者さんの施術の席について先生を待ちながら、安い牛肉を何につければ一番おいしくなるのかを考えていたところだったのです。
と、いうことで、
まいたけ肉を焼いてみました
今回はアメリカ産肩ロース(約250円/100g)を使用。まずは塩胡椒をしてよく揉み込み、包丁で筋を切断します。
それを4等分し以下のとおりに分けました。
- スタンダード(そのまま)
- マンゴーで一晩漬け込み
- まいたけで一晩漬け込み
- 白ワインで一晩漬け込み
漬け込み前はこんな感じです。
そして一晩寝かせるニャ〜
4種の牛肉を焼いてみる
条件を合わせるため同じフライパンにオリーブオイルを同量入れ、中火で両面各2分半づつ焼きました。
まずはそのままの肉と白ワイン!
おおー!肉の色もサイズも全く違う!?しかも白ワインの方はアクのようなお汁が出てきたー!!!
これは白ワインで漬けたことにより、肉の組織全体が酸性に傾き保水性が上昇。焼いた際に脱水していると考えられます。
お次はまいたけとマンゴー。
まいたけとマンゴーは肉の大きさは変化がないものの、まいたけの方が赤身の色が鮮やかでした。
焼き上がりがこちら!
さてと、役者が揃ったので…
味覚センサーレオで検証してみました
結果はこちらです。
白ワインは酸味と苦味が上がり、バランスが取れたように見えますが、少し旨味が減りました。これは焼きの工程時流れ出た水分とともに旨味も溶出してしまったためと考えられます。
マンゴーは甘味と酸味が上がりました。しかしフルーティーなステーキになってしまったため、日本人の味覚にはあまり馴染みがない可能性が…。
対して、まいたけは今回の検体の中で最も旨味が高い数値に(下図参照)。また、甘味、酸味、苦味も上がっており、全体的にバランスの取れたまとまった味となりました。
歯医者さんでおじさまが言っていた、やらこぅ(柔らかく)なるかについてですが、食感は白ワイン>まいたけ≒マンゴー>スタンダード。
以上の結果から、勝者はまいたけでしょう。旨味の上昇・味のバランス・食感的に一番牛肉をおいしくしたといえるのではないでしょうか。
どうしてまいたけで牛肉がおいしくなるの?
なぜまいたけで旨味が上がったり柔らかくなったのかというと、まいたけに多く含まれる旨味成分「グアニル酸」とたんぱく質分解酵素「マイタケプロテアーゼ」の働きによるもの。マイタケプロテアーゼの働きによって肉組織のたんぱく質を分解して柔らかくし、同時にグアニル酸が組織の中に浸透することで旨味が上がったのです。
また、マイタケプロアテーゼの働きは加熱によって失われます。例えば、「加熱したまいたけ」と「生のまいたけ」を茶碗蒸しに入れて蒸すと、加熱したマイタケの方は固まりますが生の方はドロドロのまま。
加熱したまいたけは「マイタケプロテアーゼ」の働きが失活しているためきちんと固まるのですが、生のまいたけの方は「マイタケプロテアーゼ」が卵のタンパク質が固まるのを防いでしまうために起こる現象です。
ということで、今後はまいたけを使った牛肉レシピの開発と、究極に美味しい牛肉についての調査にチャレンジしていきたいと思います!
「味博士の研究所」の牛肉への探究はまだまだつづく…