そんな悩みを抱えるそこのあなた、安心してください!この記事を読めば、そんな辛い日々から卒業できます!
今回は、辛く苦しい「耐える洗米」から世の人々を救うべく、耐える洗米よりも楽でお米がおいしくなる洗米はないのかを調べてみたいと思います。
洗米の回数で炊きあがりはどう変わる?実験開始!
今回の実験では、洗米の回数と炊き水の濁り具合でお米の炊き上がりにどのような違いが見られるかを検証します。ザルに入れたお米を、流水で軽く汚れを落としてからA,B,Cの3パターンで炊飯し、炊き上がりを比較します。
A:ズボラ洗米
3回ほど軽く混ぜて、更に水で流し、炊き水が真っ白な状態でズボラ洗米を完了しました。ほとんど水に触れないので、冷たくなんかありません。楽ちん!
B:プチ・ズボラ洗米
【3回混ぜる・水で流す】を3セット繰り返し、炊き水が半透明な状態で、プチ・ズボラ洗米が完了です。手は少し冷たいですが、全く辛くないです。
C:耐える洗米
途中で手が冷たくなり、腕が疲れましたが、気合と根性で耐え抜きました。
世の人々を洗米の苦痛から解放したい…。ただひたすらそれを願い続けて、炊き上がりを待つこと一時間。いよいよ、その時がやってまいりました。
炊飯器の蓋と共に、いざ、新しい洗米の時代の扉を開きます!
開けゴマ!いや、蓋!
まずは自分の口で検証
A:ズボラ洗米
炊飯の途中から、精米所に入り込んでしまったかのような米ぬかの臭いが漂ってきました。炊き上がりは、少し黄味がかったミルキーホワイトで、艶がありません。食感は、弾力がありますが粘りは少ないです。甘味があり、後味にしっかりとしたお米の味が感じられました。ただ酸味のある臭いがあり、炊飯器での保温時間が経過するほど臭いが強くなりました。
B:プチ・ズボラ洗米
炊飯中は、特に匂いがありませんでした。炊き上がりは白くツヤツヤで、蓋を開けた瞬間においしそうなご飯の香りが漂いました。ふっくらモチモチで適度に粘りのある食感で、糊がたくさんできていました。甘味はAに比べて少なく、全体的に少し味が薄くなったように感じられましたが、おいしそうな香りと良い食感で、食べやすかったです。
C:耐える洗米
炊飯中も炊き上がり後も、匂いがありませんでした。炊き上がりは、白くて艶はあるものの、粘りが強くベタついていました。甘味はBよりも更に少なく、味が薄く感じられて、後味も残りませんでした。
このように、洗米の回数が増えるほどお米本来の甘味や旨味が減り、味が薄くなっていくという印象でした。
味覚センサーに食べさせる
しかし人の五感に頼っていては、匂いや見た目で味覚が左右されているかもしれません。味を客観的にデータ化してくれる、味覚センサーレオくんにも、ご意見をうかがいましょう。
レオくん、どうでしょうか?
レオくんの回答が、こちらです。
やはり実際に感じていたように、洗米の回数が増えるほど甘味も旨味も減ってしまっていることが一目瞭然の結果になりました!つまり、洗米はズボラな方が良いということを支持する結果です。
ヤッタネ!これで人々を耐える洗米から解放することができます。ズボラの方が美味しいなんて、なんてオイシイ話なのでしょう!新しい時代の幕開けだ!
…でも、待ってください。たしかに自分の味覚が正しかったとはいえ、この結果を単純に喜んでいてはいけません。
なぜ、洗米するほど味が落ちてしまうのでしょうか?
味を落としてしまう犯人を突き止めなくては、安心してズボラ洗米ができません。それに、最もズボラができたAのご飯は、味はしっかりしていたものの、酸味のある臭いと粘りの少ない食感が気になりました。個人的には味・臭い・見た目・食感を総合して、Bの「プチ・ズボラ洗米」で炊いたご飯が一番バランスよく感じたのも事実。この臭いの原因はなんなのでしょうか。これも併せて突き止めることとしましょう。
洗米で味が落ちる理由
①籾殻・・・お米を守る分厚い皮。
②ぬか層(米ぬかと呼ばれる部分)・・・お米の養分を守る皮。食物繊維・ビタミン・ミネラル・脂質など、栄養が含まれていて、旨味層と呼ばれる旨味成分が詰まった薄い層があります。
③胚芽・・・芽や根の素となる部分。お米全体の6割強の栄養成分が含まれています。
④胚乳・・・成長に必要な養分の貯蔵庫。主に炭水化物とたんぱく質でできています。
籾殻を取り除く作業を「脱穀」、ぬか層と胚芽を取り除き胚乳だけを残す作業を「精米」といいます。脱穀を終えた米が玄米、精米を終えた米が白米。洗米は、精米で残ったぬか層と、表面についた汚れを落とすために行います。
ポイントはぬか層
ぬか層は胚乳よりも豊富な栄養と旨味が詰まった「旨味層」が存在する、まさにオイシイ部分。そのオイシイ部分を精米や洗米で敢えて取り除いてしまうのは、なぜなのでしょう?これこそが、味が落ちてしまうことと、酸味のある臭いの犯人なのです。
ぬか層には油を搾って米油を作ることができるほど、多くの脂質が含まれています。脂質はとても酸化が早く、臭いと食感の低下の原因となるほか、炊飯時にお米の甘味と粘りを引き出す「糊化」に必要な水分の吸収の妨げにもなると考えられます。できるだけ劣化させずに白米を流通させるために、酸化と臭いの犯人であるぬか層を取り除く「精米」が必要。
ほとんどのぬか層は精米で取り除かれますが、完全には取り切れないので、最終的に洗米によって残ったぬか層を取り除きます。洗米中の白い汚れに見えるものは、実は精米で残ったぬか層。
洗米するほど味が落ちてしまう原因は、残っているぬか層に含まれる旨味が、洗米によって洗い流されてしまうからだったのです!
ですから、旨味を残してご飯を炊くには、ぬか層を取り過ぎない「ズボラ洗米」が良いのです。現在の精米技術では、ほとんどのぬか層は精米で取り除かれていますので、昔のようにゴシゴシとお米を研ぐ必要はありません。
個人的にベストな洗米方法
しかしわずかながらも残ったぬか層は、旨味を残してくれると共に臭いの原因にもなります。まったく洗わない完全ズボラ洗米では、残ったぬか層から放出される臭いがどうしても気になってしまう…。
というわけで、あくまでも余分なぬか層は洗い流したいというのが正直なところ。ちなみに、真っ白な水に浸けながらの洗米や真っ白な炊き水も、お米がぬかごと水を吸ってしまって臭いのもととなりますので、洗米時には注意してください!
旨味を残し、ぬか臭が気にならないご飯を炊くには、汚れとぬか層は洗い流しつつも、洗い過ぎないことが大切。ずばりB「プチ・ズボラ洗米」が個人的ベストです。
今日からは、【やさしくかき混ぜる・水で流す】を2~3回繰り返す、頑張らない「プチ・ズボラ洗米」で、「耐える洗米」を卒業し、旨味を残しつつ臭みのない美味しいご飯を炊いてみてくださいね!