山岡さん、「ガスで焼いた焼肉なんて焼肉じゃねえ」のか?を検討してみた

外で食べる焼肉が美味しい理由とは?

忘年会といえば鍋が定番ですが、一年中人気の高い外食といえば焼肉でしょう!みんなで七輪を囲んでお肉を焼くのは、ちょっと贅沢な感じがしますよね。それに、家のフライパンでも焼肉は作れるものの、どうも焼肉屋で食べる焼肉の方が美味しく感じる気がしませんか?

焼肉屋の焼肉が美味しい大きな理由は「お肉の種類」と「焼く時の機材」でしょう。特に、お肉は奮発してスーパーで一番高いお肉を買えば焼肉屋のお肉に近づけるかもしれませんが、焼肉屋の仰々しい七輪(炭火)を家に設置するのは至難の技です。

炭火とガスコンロの違いについては、人気グルメ漫画『美味しんぼ』でも登場します。

ある日、老舗鰻屋の板前が、新しいオーナーの方針に不満を覚えて街中で大暴れしているところを警察に捕まえられます。

なんでも、新しいオーナーは、今まで炭火で焼いていた鰻をこれからはガスで焼くというのです。

「そんなことで暴れるなんて・・・」と当然疑問の声が上がるのですが・・・

(雁屋哲 花咲アキラ 美味しんぼ3巻より引用)

炭火とガスでは、そんなにも味が変わるのでしょうか?

このお話では鰻ですが、鰻のおいしい焼き方にはある程度テクニックが要ると思いますので、今回は誰でも試しやすい焼肉で、その違いを見てみることにしました!

焼肉屋の真髄は「七輪」にアリ?

スーパーでなるべく高いお肉を買ってきて、七輪(炭火)とガスコンロで焼き比べます。用意したお肉は、牛・豚・ラムの3種類。野菜も加えて味が混ざらないように注意しながら焼きます。まずは七輪から。

続いて、ガスコンロでも3種類のお肉を焼きます。

こうして、七輪の焼肉と、ガスコンロの焼肉の準備が完了!さっそく味を比べてみましょう!

味覚センサーでお肉の味の違いを可視化

比べてくれるのは、味博士の研究所が所有する、食べ物の味覚を数値化できる味覚センサー「レオ」!このセンサーを使うことで、食べ物の基本5味(甘味・旨味・塩味・酸味・苦味)を客観的に分析することができます。
3種類のお肉それぞれについて味覚分析を行ったところ、豚とラムでは違いが確認できました!

豚の場合は炭火の方が塩味が高くなっており、

ラムの場合は炭火の方が旨味が高くなっていました。

牛肉は旨味・塩味ともに大きな差は見当たりませんでした。

この実験から、少なくとも豚とラムについては、七輪で焼いた方が味覚が強まり味にコントラストが生まれることで、美味しさが増すことがわかりました。

炭火は旨味や香りを保持しやすい

先ほどの『美味しんぼ』のお話には続きがあります。
実際にガスで焼いた鰻と炭火で焼いた鰻を食べ比べると、その差は歴然でした。

ガスで焼いた鰻は「出来の悪い焼き魚だ」と罵倒されていますが、

炭火で焼いた鰻は湯気の立ち方から違いました。

その理由について、主人公・山岡士郎はこんな解説をします。

(雁屋哲 花咲アキラ 美味しんぼ3巻より引用)

七輪の炭火の主成分は「炭素原子」です。この炭素原子が空気中に含まれる「酸素原子」と結びつくことで、二酸化炭素になります。この化学反応が起こるときに熱が生じるのが炭火です。

一方、ガスコンロのガス(メタンガス・プロパンガスなど)は、同じく空気中の酸素原子と結びついて熱を発しますが、成分のメタンやプロパンには「水素原子」が含まれています。水素原子と空気中の酸素原子が結びつくと水分子が出来上がります。水分子できると、お肉の香ばしい香りや旨味が流れ出してしまう原因となることがあるようなのです!このため、水分子が生成されない炭火の焼肉の方が、旨味や塩味を閉じ込める力が強いのだと考えられます。

また、牛肉では味の変化が見られなかったのは、肉の組織のつくりの違いや熱の伝わり方の違いが理由だと予想されますが、詳しい理由はもっと実験をしてみないとわかりません。

以上より、焼肉屋さんで食べるお肉は美味しい理由は炭火で焼くところにあると言えそうです。今のところ、牛肉の場合はガスとの差が少ないようなので、家で焼肉をする場合は牛肉にしておくと無難かもしれませんよ!

※本記事はマンガHONZさんと共同企画させていただいております。


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