摂り過ぎも摂らなさ過ぎもNG!偏った糖質摂取の危険性

あなたは、「糖質制限」について意識したことがありますか?

「糖質は少なければ少ない方がいい」という風潮が蔓延している昨今。しかし、「糖質=悪」と決めつけて徹底排除してしまう考え方は、とても危険なんです。

糖質は、摂り過ぎも摂らなさ過ぎも良くない。

ダイエットやトレーニングについて考えると、糖質について良い印象を抱くのは難しいかもしれません。

とくにトレーニングジムなどでは、糖質が悪者同然の扱いを受けている様子をよく目にします。ご飯やパン、また、イモ類や根菜といった炭水化物を一切摂らずに、肉(または魚)と野菜中心の食生活を送る人もいます。

極端に炭水化物といった糖質を摂らずに、肉などの動物性たんぱく質や脂質ばかり摂る食生活は、短期であればあまり問題ないかもしれません。

しかし長期的に続けると、抗炎症作用のある善玉コレステロールが減少、悪玉コレステロールが増加することにより、細胞の老化や酸化ストレスを促し、腸管での炎症や動脈硬化をはじめとする循環器系疾患を誘発する恐れがあります。

一方で、糖質を摂り過ぎると血糖値の乱高下が激しくなり、インスリンの分泌異常だけでなく、肥満へとつながる可能性が高いです。細胞の酸化による老化は、過剰摂取によっても起こり得ます。

炭水化物の摂取はどのくらいが良い?

総エネルギー摂取量のうち、炭水化物が50%~55%を占める場合。これが、最も死亡リスクが少なくなる割合です。

炭水化物摂取量が全体の40%以下、または70%以上を占めるようになると、徐々にリスクが高まっていくという、U字カーブ型の関連性が明らかになっています[*1]。

参考*1  『Dietary carbohydrate intake and mortality: a prospective cohort study and meta-analysis』(Sara B Seidelmann, MD他)より引用

これはアメリカで行われた、45歳〜64歳を対象にしたFFQ(食事摂取頻度調査票)によるアンケートおよび1987年〜2017年まで健康状態との関連性の調査と、Atherosclerosis Risk in Communities Study(ARIC)の生活習慣病に関するデータをメタ分析した結果です。

大切なのは「正しい」炭水化物を選ぶこと

いわゆる「悪者」扱いされている糖質というのは、加工・精製された食パンや菓子類といった「単純炭水化物」を指しています。

精製された小麦や米、コーンシロップなどを多用した菓子やキャンディーには栄養価はほとんどない反面、血中への吸収が早く、大量のインスリンを消費します。

同じ糖質でも、未精製の穀物やイモ・根菜類といった「複合炭水化物」は、血糖値の変動も穏やかな上に、同時にミネラルなどの栄養素をバランスよく摂取することができます[*2]。

「PBWF」という言葉をご存知ですか?PBWF(Plant-Based Whole Food)とは「精製・加工されていない植物性の食材」のこと。これらの積極的な摂取は、人体の健康にとって非常に有効なものであると国連も推奨しています[*3]。ちなみに、地球環境にも良いそうです。

玄米や全粒粉などの未精製の穀物、大豆などの豆類、またはアボカドやアブラナ科の野菜(ブロッコリーや芽キャベツなど)がこれにあたります。

植物性たんぱく質は、動物性たんぱく質に比べて、細胞の炎症や老化といった体へのダメージもなく、効果的に体に必要なたんぱく質とエネルギー源である糖質をバランスよく摂取できるんです。

欧米ではヴィーガン・アスリートと呼ばれる、菜食主義者のランナーやプロレスラーなどのスポーツ選手が多く活躍しています。彼らはPBWFの食生活で、しっかりと糖質やたんぱく質を摂り、見事な筋力・持久力を維持しています。

これまで、「糖質ゼロ=ダイエットに効果的、筋肉増強に不可欠」と思っていた方も、是非この機会にご自身の食生活を見直し、バランスのよい献立に組み替えてみてはいかがでしょうか?

参考:
*1 the Lancet public health journal 『Dietary carbohydrate intake and mortality: a prospective cohort study and meta-analysis』(Sara B Seidelmann, MD他)
*2 T・コリン・キャンベル他『葬られた「第二のマクガバン報告」(上)』(P285~288)
*3 UN News 『UN study urges governments to develop guidelines that promote ‘win-win’ diets』

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