同じ人間とはいえ、国や地域によって食文化が違うわけですから、日本人と外国人では食の好みが異なります。そういった食文化は、「消化」にも影響します。
個人差はあるものの、人種によって消化できる食べ物やできない食べ物、しにくい食べ物があるんです。今回はそういった食べ物の代表格、「海藻」「乳製品」「アルコール」について取り上げてみました。
日本人は海藻を消化し栄養にできる
2010年のことですが、科学雑誌『nature』に掲載された論文にて、日本人の体内から海藻を消化する酵素を持った腸内細菌が見つかったことが報じられました[*1]。
欧米人の体内はこうした細菌(腸内バクテリア)が存在しないため、海藻を大量に食べると消化不良を起こしてしまうようです。
なぜ日本人だけなのかというと、歴史的に長い期間海苔やわかめ、昆布などの海藻を常食してきたからです。
例えば海苔。701年に制定された、日本最古の法律書である大宝律令にも「海苔は高級品」と記載があります。長い歴史の食文化の中で、こうした食べ物を消化できるように進化した……ということなんですね。
乳製品はアジア人に向かない!?
個人差はあるものの、一般的に日本人には向かないと見られている食べものもあります。牛乳を飲むとおなかを壊しやすくなる乳糖不耐症です。
日本人を含めたアジア人の大部分、アフリカ系の人は、7割以上がこの乳糖不耐症で、牛乳に含まれる乳糖を分解できない体質だと言われています。国立がん研究センターの論文でも、乳製品をよく摂取するグループで前立腺がんの発症率が高いことが報告されています[*2]。
このほか、欧米人より日本人の方がアルコールを消化する酵素を持つ人が少ないこともわかっています[*3]。理化学研究所などの遺伝子解析によると、アルコールに弱い日本人は100世代にわたって増え続けているようです。
アルコールに弱い方が有利になるために進化したのかもしれませんが、理由は不明だそう。
昨今は食のグローバル化が進んでいますので、今後はもしかすると違う方向に進化していくかもしれません。ただ、現時点ではこういった食べ物には気をつけた方が良いのではないでしょうか。海外で「健康的だ」と言われ流行っている食べ物、食生活でも、日本人には合わない可能性があるからです。
また、外国の方と食事をするときは、こうしたことに注意した方が良さそうですね。とくにアルコールは、欧米人に付き合って飲むと次の日しんどい可能性が高いです。
参考:
*1 Vol 464|8 April 2010|doi:10.1038/nature08937
Transfer of carbohydrate-active enzymes from marine bacteria to Japanese gut microbiota
*2 Cancer Epidemiol Biomarkers Prev. 2008年17巻930-937
*3 “Deep whole-genome sequencing reveals recent selection signatures linked to evolution and disease risk of Japanese“, Nature Communications, 10.1038/s41467-018-03274-0
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