電気肉は熟成を強制的に進める?
焼く前に切れ目を入れたり、肉専用ハンマーで叩くなど、お肉を美味しくするための方法は多々あります。中でも、一際異彩を放っているのがお肉に電気を通す「電気肉」というもの。「電気肉」は、お肉に電気を通すことで熟成が進み、「ATP」という物質が旨味成分である「イノシン酸」に変わり、旨味がアップすると考えられています。
電気肉の歴史は19世紀に遡り、元々は、死後硬直によってお肉と骨がくっついて離れない状態から、すぐに骨をはがすために電気を流して微振動を与えていたようです。それを元に、麻生大学の坂田亮一先生が中心となって『鶏胸肉の美味しさ向上のための通電装置』なるものを開発。この、このお肉専用の通電装置を使うことで、旨味がアップするほか、お肉の細胞のすき間がはっきりすることで食感も変わるようです。
ただし、この電気肉には様々な意見があります。先日、電気肉が食べられるイベント「科学実験酒場」に参加した際も、
Aさん「確かに味が変わった気がする!」
Bさん「そうかな?プラセボ(思い込み)なんじゃない?」
という会話が交わされていました。電気を通すことで味が変わるか変わらないかは、賛否両論なのですね。
こうした論争に決着をつけてくれる装置といえば!
そう、食べ物の味覚を数値で表すことができる、味覚センサー「レオ」です!
お肉に電気を通すと本当に旨味がアップするのかをこの目で確かめるべく、味覚センサー「レオ」を使って電気肉の味覚を調査してみました!
お肉にオーラが見える!?電気肉実験スタート!
実験に協力してくださったのは、サイエンスライターの川口友万さん。『みんなのための「ストレスチェック制度」明解ハンドブック』(双葉社)や『あぶない科学実験』(彩図社)など、幅広い執筆活動をされている傍で、科学実験をしながら料理を楽しむ「科学実験酒場」という面白いイベントも主催されています。
自前の通電装置で、鶏肉と、肉以外も美味しくなるかを調べるためにマグロについて、電気肉(電気魚)を作ってみました!通電するのはなんと1万5000ボルト!これは慣れていないと危険です。心の中では皆さんにも試していただきたいとは思いながらも、一メディアとして「初心者は真似しないようにしましょう!」と言わざるを得ません。初心者は真似しないようにしましょう。
イカツイ通電装置はこちら。
セッティング中の川口さん。電気を通すように飽和食塩水を注入。
準備ができたら部屋の明かりを消し、いざ通電!
お肉の周囲に電光が走っているのがわかります!
動画でもどうぞ。
もちろん、マグロの場合も同様です。バチバチと言わせながら、3分間ほど待ちます。
こうして電気肉(電気魚)と、電気を通してない肉(魚)の準備ができました。さっそく、味覚センサー「レオ」で味覚を分析してみましょう!
味覚センサー「レオ」で電気肉を分析!
電気を通した鶏肉・電気を通さない鶏肉、および、電気を通したマグロ・電気を通さないマグロについて味覚分析をした結果がこちらになります。
鶏肉では、通電した場合に旨味が0.20ポイント、
マグロでは、通電した場合に0.36ポイント上昇していました!
95%の人が違いを判別できる「有意差」は0.20ポイント以上なので、鶏肉、マグロどちらにおいても旨味がアップしたといえるでしょう!特にマグロは大幅に旨味が上昇いたしました。
実際食べてみても、味博士も思わず笑ってしまうほど味が違いました。
これより、お肉(やお魚)に電気を通すと旨味がアップするというのは本当だったことが分かりました!
川口さんは「電気肉は殺菌効果もバツグンなので、レバ刺しのようなものにも応用することもできそうです」と語っています。
電気肉は、これからお肉調理の新しい形として普及していくのか、いかないのか、全くもって未知ですが、ぜひビジュアル的にも面白くお肉を美味しくする方法として、ぜひ覚えておいてくださいませ!
電気肉は、川口さんが毎週日曜日に東京・武蔵小山にあるBar「フロムロンドンカフェ」内の一角で開催中の「科学実験酒場」というイベントで食べることができます。次回開催は12/27だそうです、興味のある方は足を運んでみてください♪ → 詳細はこちら(Facebookページ)