▪︎北海道民だけなぜ特別!?
暑いとついつい、しょっぱいものが食べたくなりませんか?
日本人は、海外の人から「お前らファッキン塩分取りすぎ」と言わがちです。
特に、東北地方の人たちは、しょっぱいもの大好きな傾向にあるようです。
厚生労働省の統計(2010年)「塩分消費量が多い都道府県トップ15」では、青森県・秋田県・福島県・山形県・岩手県・宮城県と、東北地方がすべてランクインしています。
一方、最も寒いはずの北海道は、不思議なことに下から数えて10番以内に入るほど、塩分消費量が少ないのです。
この差は、一体なぜ生まれてしまったのでしょうか!?
▪︎東北地方「わりぃ、やっぱり塩分好きは寒さのせいだったわ!」
北海道と東北地方の塩分摂取量の違いは、過去の食文化に起因します。
東北地方で塩分消費が高まった理由としては以下のようなことが考えられています。
1.寒さから食材を守るために漬物の文化が発達した
東北地方は寒いため、たくさんの野菜を作ることができません。
このため、作った野菜を長持ちさせるために、塩漬けにして保存されるようになりました。
塩漬けにすることによって、細菌の繁殖が抑えられるためです。
こうして、東北ではお漬物の文化が発達したのでした。
2.体温の低下から体を守るために塩分を摂りがちになった
塩分を取ることで血圧が上がります。
塩分の取りすぎが高血圧につながるという話はよく耳にするのではないでしょうか。
血圧が上がると、体の末端まで血液を送ることができるようになります。
血液の循環が良くなると体が温まってくるので、寒さしのぎになるのでした。
こうした寒い気候による、漬物文化の発達と塩分の必要性があった歴史が、東北民の塩分好きの傾向を生み出したと言えるでしょう。
▪︎北海道「塩が好きとか嫌いとか言ってられる状況じゃなかったわ!」
一方の北海道は、同じように寒いとはいえ、以下のような異なる食文化を持っていました。
1.塩が大量に手に入らなかった
アイヌ民族が住んでいた頃の北海道では、塩は交易でのみ手に入る貴重品でした。
少々の味付けには利用したものの、保存料として大量に使うことができませんでした。
調味料としてよく使われていたのは、獣脂や魚油であったと言われています。
「漬物」に相当するアイヌ語がなかったと言われるくらい、東北地方とは別の道をたどっていたようです。
2.塩より砂糖派だった
北海道には「てんさい」と呼ばれる砂糖の原料となる植物の栽培が盛んです。
てんさいの栽培文化は明治時代に導入され、以来北海道では調味料として砂糖が頻繁に使われています。
納豆に砂糖、トマトに砂糖、アメリカンドックにまで砂糖、とまで言われるくらいです。
このような背景から、塩より砂糖派な味覚が出来上がったようです。
北海道では、こうした塩の使用を遠ざける歴史があったために、他の寒い地域とは異なる特色を持っていると言えるでしょう。
もちろんこれは、あくまで傾向の話であって、すべての人に当てはまるわけではありません。
今では、どこにいても様々な料理を食べられるようになっているため、寒い地域の人々の味覚も変化しつつあるでしょう。
しかし、同じ寒い国でも塩分の使い方に差があるのは、こうした背景があるからなのでした。
ともあれ、どこの都道府県にいても、塩分の取りすぎは体に悪いですので、汗をかいても塩分はそこそこに、お水を飲んでお過ごし下さい!
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