考古学者、人類学者、遺伝学者などから構成された国際研究チームは、エクアドルのマヨチンチペの遺跡から食用目的のカカオの痕跡を発見しました。なんと、5300年前にカカオが食用として栽培されていたことが判明したんです。
なぜこれが驚愕の事実なのかというと、これまでの仮説では、3900年前に中米の人々が食していたカカオが歴史に残る最初の痕跡と言われてきたから。
今回、オンラインジャーナル『ネイチャー・エコロジー&レボルーション』に掲載された調査研究は、それよりも1500年もさかのぼることになります。
一考古学者の直感から始まった調査研究
この研究は、カナダのブリティッシュコロンビア大学考古学教授マイケル・ブレークの直感から端を発しています。
16年前、ブレーク教授は何人かの同僚たちとともにエクアドルのサンタ・アンナ・ラ・フロリダの古代集落を調査していました。現在は、マヨチンチペ遺跡と呼ばれている場所です。
この地で教授は「カカオを飲料にしていたのではないか」と推測される非常に精巧な陶器を発見します。この陶器がカカオ飲料のために使用されていたことを直感したブレーク教授と研究チームは、3つの調査を実施しました。
1つめは、陶器に残っていた炭化した残渣を分析し、その微粒子がカカオの実の種の部分と一致することの確認。
2つめは、熟したカカオの種子にのみ存在する、アルカロイドの一種「テオブロミン」の科学的な特徴を同定。
最後に、陶器に残る残渣のDNAを分析、現代まで残るカカオの木のDNAとの一致を見出したのです。
日常的な飲み物であったカカオ
炭素年代測定法により、マヨチンチペの人々はすでに5300年前からカカオを食していたことが明らかに。
残渣物の調査は、墓所から発見されたものと日常生活の空間から発見されたもの双方の容器が用いられています。研究に参加したフランスの農業研究所(La recherche agronomique pour le développement)のカカオ専門家は、当時のマヨチンチペの人々は、「葬儀の儀式においてだけではなく、日常的にもカカオの飲料を摂取していた」と結論を出しました。
エクアドルの太平洋岸にある地域は、カカオの「ナショナル種」の生産地として有名です。考古学者は、古代から海岸の住民と内陸部にあるアマゾンに住む人々との交流があった可能性も示唆しています。
実際、内陸部の村落からも貝殻をはじめとする海の産物が発見されていてカカオの流通をこうした事実から垣間見えるのだとか。
これまでの研究では、マヤやオルメカの文明を代表する中米がカカオの原産地という説が多勢を占めてきました。これは、およそ3900年前のことと言われていました。
しかし、多湿のアマゾンに残るカカオの木の遺伝的多様性を考慮すると「カカオの歴史はそれよりもかなり古いのではないか?」と主張する学者も非常に多かったそうです。今回の研究は、それが実証されたことになります。
参考:
98 Il cioccolato più antico del mondo è di 5300 anni fa
The use and domestication of Theobroma cacao during the mid-Holocene in the upper Amazon
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