夏になるととくに美味しい、炭酸飲料。暑い日はなんだか無性に炭酸のシュワシュワを感じたくなりますよね。そして炭酸の代表格、コーラは何度でも飲みたくなる中毒性を持っています。
しかし子どもの頃、「コーラを飲むと歯が溶けちゃうから、あんまり飲んじゃダメよ!」と言われたことはありませんか?
大人になってからもその記憶が根強く、炭酸は控えめにしよう……と思っているかたもいるかもしれませんね。
この話、実は本当であり、嘘でもあるんです。
コーラで歯は溶けるのか?
歯の主成分である炭酸カルシウムは、酸で溶ける性質を持っています。また、歯の表面を覆っているエナメル質はpH5.3付近から溶け始めます。対して、コーラのpHは2.4[*1]と比較的強い酸です。
口の中には唾液があり、唾液中のカルシウムイオンやリン酸イオンの働きによってエナメル質の溶解はある程度防がれます。しかし、コーラのような飲み物では、唾液による中和はあまり期待できません。歯は酸に直接さらされていることになります[*2]。
とはいえ、飲み物なので、あくまで歯に触れているのは一瞬。また、コーラでなくとも果物など、酸の強い食品はたくさんあります。唾液が酸を中和し、食事で溶けたエナメル質を再構築(再石灰化)してくれているので、「コーラが直接歯を溶かす」というのは少し難しいのではないでしょうか。
また、「骨が溶ける」と言われることもあります。骨も歯と同じく炭酸カルシウムが主成分なので、酸で溶ける性質があります。しかし、正常な消化の中で炭酸飲料が直接骨に触れることはないので、骨が溶ける心配もないと言えます。
どちらかというと、問題なのは「糖」のほうです。
歯や骨が溶けると言われるのはなぜなのか
口内の細菌が糖などから酸を産生することによって、歯のエナメル質が溶けてしまうと虫歯が発生します[*3]。
唾液による酸の中和、エナメル質の再構築速度よりも、エナメル質を溶けるスピードがはやいと、虫歯になってしまうんです[*4]。
そのため、大きな原因となる糖を多く摂取する、つまりコーラなどの炭酸飲料をたくさん飲んでいれば、虫歯になる可能性が高いと言えるでしょう。
しかし、糖の多い炭酸飲料を飲みすぎない、コーラを飲んだ後に限らずこまめに歯磨きをするといったケアをしておけば当然、虫歯になるリスクも低くなります。
では、なぜ「コーラで歯が溶ける」と言われるのか。それは、糖が口内に残ることで酸が産生される→エナメル質が溶ける→虫歯になる(歯が溶ける)が端的に言い表されているのかもしれません。
また、もしかしたら虫歯のリスクを負わせないために「虫歯になるよ!」より「歯が溶ける!」といった、ちょっと怖い表現が用いられているのかも。
コーラで歯がぼろぼろに……といったことはありませんが、ケアを怠ると文字通り歯が溶けてしまう恐れはあります。糖の摂りすぎは生活習慣病にも繋がる可能性がありますので、くれぐれも飲みすぎない、歯磨きをするなど、節度を守って美味しく飲みましょう。
参考:
*1 市販飲料の糖分、酸性度
*2 エナメル質臨界pHについての理論的考察
*3 歯の健康維持に役立つ飲料の作用。
*4 脱灰と再石灰化
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