料理をしていて、アルミホイルが溶けるのを見たことはありませんか?アルミホイルのパッケージには梅干しやみそ、醤油などの塩分や酸の強い食べ物を長時間包む際の注意書きがあり、変色や侵食の原因になると記載されています。
ラップと比べて劣化がわかりにくいため、つい安心して料理の際に使いがちなアルミホイル。しかし理科の実験を思い出してみてください。アルミホイルが溶ける様子を観察したり、アルミホイルが溶ける際の電子を利用した電池を作ったことはありませんか?
日々の料理の中で、アルミホイルは意外とすぐに溶けてしまうこともあります。実際に、普段の調理をイメージしながらいくつかの食材を試してみました。
溶けやすいのは梅干し
まずは、アルミホイルの上に、酸化や腐食の原因となるであろう梅干し・塩・しょうゆ・トマトケチャップを乗せ、2日ほど置いてみました。
2日後、梅干しを置いていた箇所は溶けて、ハッキリとわかる穴が開いてしまいました。
梅干しは酸性の食材なので、溶けるのも早かったのでしょう。梅干しを保存する際やお弁当に入れるときはアルミホイル部分に直接当たらないよう注意したほうがよさそうですね。
ただ、しょうゆ・ケチャップ・塩を置いたところは、数日経っても特に変化が見られませんでした。煮物でアルミホイルが溶けたという話をたまに聞きますが、煮物に入っている調味料や具材などによって影響は異なるかもしれません。
電気分解で溶解が早まる
次に、ステンレスのボウルに大さじ1杯程度のトマトソースを入れてみました。アルミホイルの切れ端をボウル、トマトソースの両方に触れるように置きます。
2日ほどすると、ステンレスのボウルにいれたホイルは、トマトソースに触れた部分から徐々に溶けていきます。
トマトソースのpH値は梅干しほど小さくありません。梅干しは酸性のものが多いですが、トマトソースは弱酸性程度でしょう。にも関わらず梅干しと同じくらいのスピードで溶けてしまったのには、理由があります。
酸の中に2種類の金属を入れると、電流が発生し電気分解が行われるため、ステンレスとアルミホイル、トマトソースの組み合わせで反応が早まります。
このとき、ステンレスとアルミホイルが電極となって、トマトソースの中を微量の電流が流れています。同時に、アルミホイルは少しずつ分解して、トマトソースに溶け出しているんです。
一時期は「アルミニウムが体内に入るとアルツハイマーの原因になる」などという説が声高に叫ばれていました。しかし現在、アルミニウムとアルツハイマー発症の因果関係は証明されていません。
とはいえ、食べ物の表面にアルミが浮かんでいるのも、アルミが溶けているかもしれないと思いながら食べるのも、気持ちのいいものではありませんよね。
アルミホイルはできるだけ酸・塩分を避けて使いましょう。アルミは両性金属のため、アルカリにも注意が必要です。
また、金属製の鍋で料理をするとき、落し蓋にアルミホイルを使うのは短時間でも避けたほうが良さそうです。
参考:
ロバート・L. ウォルク (著), Robert L. Wolke (原著), ハーパー 保子 (翻訳) 『料理の科学〈1〉素朴な疑問に答えます』楽工社 (2012/12/1)
「アルミニウムと健康Q&A(監修H.M.ヴィスニスキー氏)」
食品安全委員会第 32 回企画専門調査会(2009 年 12 月 17 日)資料4