奇跡の産物!旨味を知っていたのは日本人だけだった!?

食べ物の味を構成する基本5味のひとつである「旨味」。旨味物質のグルタミン酸は、東京大学の池田教授によって1908年に発見されました。

しかし、日本人にとって旨味は馴染み深いものですが、海外の人にとってこの味覚の存在は当初、懐疑的なものであったそうです。

日本人だけが旨味を知っていた、その理由とは

現在では世界的にも認められている「旨味」ですが、以前はそうではありませんでした。旨味が認められるようになったのは2002年、舌に旨味の知覚に反応する受容体が見つかってからのこと。割と最近のことなんです。

海外、とくに西欧の人々は当初、旨味の存在に否定的な見解を示す人が多かったそう。

これは、日本の伝統的な「だしの取り方」に起因しています。日本は昆布だし、鰹だしなど、「旨味」に特化した味。例えばこちらは昆布だしの味覚チャート図ですが、見事に旨味が特出して強いです。

食材からだしと取り、アクを取って雑味をなくし、澄んだスープを作る……だしを取ったスープを飲めば、「旨味」だけを味わうことができますよね。旨味を知らなくとも、「甘味でも酸味でも苦味でも塩味でもない、第5の味覚がある。それがこの味だ!」と言われたら納得できるでしょう。

しかし、海外の場合はそうではありません。トマトや肉など旨味物質が豊富な食材と一緒に他の野菜などを入れ、甘味や塩味がふんだんに含まれたスープを作ります。甘味、酸味、塩味、苦味など、味覚がせめぎあう中から旨味だけを感じ取るのは至難の技。「これが旨味だ!」といえる指標がなかったんですね。

また、味覚力はそれぞれの味覚の存在を意識するほど磨かれます。特定の部位を鍛えるとその部分の筋肉が発達するように、甘味だけを味わっていれば甘味を感知する力が強くなります。

旨味に対しても同様ですから、海外の人はそもそも旨味を感じにくかったんです。もちろん旨味物質が特定される以前に第5の味の存在を提唱する海外のシェフもいましたが、そこまで味覚が鋭い人は希少だったのではないでしょうか。

日本のだしが洗練された理由は2つ挙げられるでしょう。まず、日本の水が軟水でだしを取りやすい水質であったこと。硬水では旨味成分がミネラルと競合するため旨味を感じにくいのです。2つめは、昆布、鰹といった旨味のみが出る食材に恵まれたこと。

偶然の巡り合わせではありますが、昔から旨味を味わい、旨味を多く含んだ日本の伝統的な料理が出来上がったのは奇跡とも言えるでしょう。

料理において旨味を強く出すと、調味料を使う量が少なくて済みます。ユネスコ無形文化遺産にも登録された和食はとってもヘルシーなもの。自国の料理に誇りを持ちたいですね。

関連記事:
軟水と硬水でだしの旨味はこんなに違う!味覚センサーで徹底比較してみた
ユネスコ無形文化遺産にも登録!日本の和食が健康的である理由とは
味覚力の鍵?日本人の異質な「米の味わい方」

味覚の知識カテゴリの最新記事