「食」は私たちの生活の根幹に位置するもの。食の楽しみは、ただ食べるだけに止まりません。
例えば、Instagramで食べ物に対しても使われる“フォトジェニック”は食と写真のコラボレーションといえるでしょうし、ドイツビールの祭典「オクトーバーフェスト」は食と祭りのコラボレーションです。
そして今、イタリアで芸術と食のコラボレーションプロジェクト「グストリア」が始まっています。今回は海外の食の動きを覗き見してみましょう!
芸術史から食を切り取るプロジェクトとは
イタリア語では、味覚を「グスト (Gusto) 」と呼び、歴史のことを「ストーリア (Storia) 」と言います。このふたつが合体して生まれたのが、「グストリア (Gustoria) 」です。
プロジェクトを立ち上げたのは、食の歴史に関する協会「Associazione culturale Pachis」。
これはただ料理の歴史を楽しむのでもなく、美術史を勉強するのでもありません。歴史の進化の記録といっても良い芸術品の一部から当時の食を研究。ひとつの美術品とひとつの料理からイタリアの食の歴史を語ろう、というプロジェクトです。
イベントに登場する芸術品は、彫刻や絵画だけではありません。詩や音楽も含まれており、視覚、聴覚、味覚に訴えて文化的関心を喚起するんです。
発足のきっかけとなったのは2015年に1人のシェフが開催した、古代ローマをテーマにした食事会。研究対象である古代の食事に興味を持ち続けていた考古学者ラウラ・ピネッリが、シェフのこの催しにさらに意義を持たせたいと共感し、人材を集めて「グストリア」誕生となったそうです。
過去の料理を再現させるという試み
プロジェクトが開催するイベントは、2018年春から始動。対象となる芸術品は、有名なものもそうでないものもあります。
コラボする料理人は、ローマで著名なレストランを取り仕切る3人のシェフです。また、将来的には伝統的な食材を伝える職人も参加予定なのだとか。
イベントでは、担当するシェフが考古学者から与えられた情報をもとに、自身の感性を用いて料理をつくります。考古学者や食文化の専門家が当時の食事情を説明し、入館者はシェフが考案した料理を味見できます。
ちなみに、料理の試食も「美術館入場料」に含まれていますから、興味がある人はイベント開催日のチェックが必要です。
また、さらに興味がある人は、シェフが腕をふるうレストランで、史料からインスピレーションを得たその他の料理も味わうことができます(こちらは有料です)。
直近のテーマは「エトルリア文化」
今年いっぱい、美術館や博物館や考古学公園を移動しながら毎月開催される予定の「グストリア」。最初の2回は古代エトルリア文化がテーマです。
エトルリア文化は、イタリアで紀元前8世紀から紀元前1世紀頃まで続いた都市国家群の文化です。エトルリアのネクローポリと呼ばれる墓からは、当時の豪華な饗宴を想像させる調理道具や食器類が発見されています。
それによると、エトルリアの貴族たちは鳥類やイノシシなどの肉を食べており、ローストだけではなく燻製といった調理法も用いていたようです。
第1回目は、エトルリア文化の博物館としては世界最大級ともいわれるヴィラ・ジュリア国立博物館で開催されました。シェフが考案した料理は「燻製黒ごまと鴨肉をオイルと赤ワインで味つけした」ものだったそうです。
6月はヴィテルボ近郊にあるヴルチ考古学公園で開催予定だそう。
食と芸術、そして歴史に興味がある方は、ぜひチェックしてみてくださいね!
参考:
Gusto + Storia = Gustoria: a Roma un Grand tour tra arte e gastronomia
Gustoria. Il progetto che unisce il cibo all’archeologia
Gustoria il progetto dove si sposano cibo e arte
http://www.pachis.roma.it/
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