「おふくろの味」は子どもにどこまで受け継がれるのか?調査の結果・・・

私たちの味覚や味の好みには、これまでの食経験が大きく影響します。中でも最も影響を与える食経験といえば、毎日のように実家で食べたご飯でしょう。私たちは無意識的に、各々の「おふくろの味」を基準とするように育ちます。実家を出て一人暮らしで自炊を始める時にも、まずメニューの参考にするのは、実家で親が作ってくれた料理ではないでしょうか。

このように舌と記憶で受け継がれていく概念とも言える「おふくろの味」ですが、子どもの手によって必ずしも100%再現されるわけではありません。「おふくろの味」は子どもにどこまで影響を与える存在なのでしょうか。

「味」は必ずしも受け継がれていなかった!?

「おふくろの味」がどの程度受け継がれるのかを調べた研究として、埼玉大学の研究者らが22組の親子(子供は大学生)に行った調査があります。22組の親子に肉じゃがを調理してもらい、使用した食材や食材の切り方、使用した調味料、味の濃さなどが親子でどの程度一致しているかが調べられました。

その結果、使用した食材や食材の切り方はよく一致していました。たとえば、肉じゃがには牛肉派と豚肉派がいると思いますが、22組中20組で、親子が使うお肉が一致していました。また、食材の切り方についても、じゃがいもは22組中18組、たまねぎは15組それぞれ一致していたようです。しらたきや椎茸といった、入れる入れないが分かれる食材についても、親子で共通して「入れる」を選択していた親子では切り方も一致していました。

さらに、使った調味料の一致度も高かったようです。肉じゃがの味付けとしては、醤油、砂糖、酒、みりん、だしなどが使われますが、多くの親子でこれらの使用が一致していました。また、22組中9組の親子は、使用した調味料がすべて同じだったようです。

しかし、使用した調味料が似通っているにも関わらず、味付けは必ずしも同じではなく、特にしょっぱさ(塩分濃度)や甘さ(糖度)がまったく異なる親子が多く見られました。中には、煮汁の濃度が2倍ほど違う親子もいたようです。味覚の細胞は10日で生まれ変わることを利用して薄味に慣れるダイエット法があるように、濃い味が好きか薄い味が好きかといったことは、育ってきた食環境に関わらず直近の食生活によって変化しやすいのかもしれません。

このように、「おふくろの味」として子供に受け継がれやすいのは、「食材の選び方・切り方」や「調味料の選び方」であって、「味付け」ではなかったことがわかりました!

子どもが親の料理を真似するときは、まずは料理の見た目や、親がキッチンで使っていた調味料のビジュアルなど、見た目で覚えたものを真似するように作るのかもしれませんね。おふくろの味を完全に再現するためには、配分などを親からしっかり教えてもらう必要がありそうです。

大人になった読者の方も、たまには料理を通じて親子のコミュニケーションをとってみてはいかがでしょうか!

参考:
親子間における料理の類似性

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