人類最大の脅威の1つは、通称「G」こと、ゴキブリでしょう。一部の昆虫好きを除き、ひとたび家の中にGが出ようものなら大パニックです。そんなパニックを回避するために、私たちは家の中に「ゴキブリホイホイ」を設置し、Gとのエンカウントを最大限回避しようと試みます。
しかし、日々しぶとさを進化させているゴキブリたちの中には、ゴキブリホイホイが全く効かないタイプが出てきてしまったようです。その理由は「ゴキブリの味覚の進化」にありました。
生物界の常識を覆すゴキブリの発見
私たち人間の味覚は、甘味・旨味・塩味・酸味・苦味の5種類があります。味覚はもともと、食料とそうでないものを判断するために発達した感覚です。たとえば、甘味はエネルギー源のサイン、酸味は腐敗のサイン、苦味は毒物のサイン、だったと考えられています。
味覚の種類に違いはあれど、多くの生物は味覚を持っており、それを生存に役立ててきました。いわば、味覚は、生物としての本能的な感覚なのです。食経験によっては成長とともに苦いものが好きになることはあれど、基本的に生物は、エネルギー源である甘味が好きで、毒物である苦味を嫌うように生まれています。
そんな、億単位の年月をかけて培われてきた生物界の常識を、見事にぶち壊しにきた生物種こそが、ゴキブリなのです!
甘味を避けまくるゴキブリ
「ゴキブリホイホイ」をはじめとする、毒入りのエサを設置してゴキブリを駆除するタイプの殺虫剤には、ゴキブリをおびき寄せるために、砂糖などの甘味成分が加えられています。ゴキブリだって生物の一種なのですから、甘いものにおびき寄せられるはずなのです。
しかし、最近では、なんと甘味を苦味と感じて避けるゴキブリがいることが分かってきました。アメリカの研究者は、「チャバネゴキブリ」という茶色いタイプのゴキブリの中には、砂糖の主成分である「ブドウ糖」を回避するものがいることを発見したのです。
このゴキブリは、ブドウ糖の含まれる食べものを舐めると、まずいものをとっさに吐き出してしまうかのように嫌がる反応を示すのだと言います。また、ブドウ糖のエサと、別の甘味成分である果糖のエサを並べたとき、ブドウ糖のエサには見向きもずに、果糖のエサに一直線だったようです。
さらに研究者らが、ブドウ糖を避けるこのゴキブリの神経について調べたところ、ブドウ糖は、甘味を感知する神経ではなく、カフェインなどの苦味を感知する神経を刺激し、甘味を感知する神経の働きを抑えていたことがわかりました。つまり、神経回路そのものが、甘味を苦いと感じるように変わってしまっていたのです!これは脅威的ですね…。
生き延びるために、ついにエネルギー源のサインを回避するようにまで進化したゴキブリ。ゴキブリと人間との戦いはまだまだ終わりそうにありません…。
参考:Changes in Taste Neurons Support the Emergence of an Adaptive Behavior in Cockroaches
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