料理にワインを使用するタイミングは幅広く、下ごしらえから調理中、さらには料理が仕上がった後など多岐にわたります。その上料理と一緒に嗜むこともできるワイン。
前回はワインを下ごしらえに使用した際の原理やメリットについて解説しました。今回は調理に使う場合です。
ワインの消臭効果
ワインを調理に使用するメリットとして、生臭みなどを抑える効果が期待されています。一体、どのような理由で臭さを抑えられるのでしょうか。
ワインに限ったことではありませんが、アルコール(エタノールが主)は魚などの生臭みをマスキングする効果があるため、まず下ごしらえの時点で生ものなどをマリネしておくと、臭みが消されます。
下ごしらえ編で説明したように、ワイン中にはタンニン、クエン酸などの有機酸、硫黄化合物であるジエチルスルファイドなどが含まれます。これらも消臭効果があると知られており、ワインの場合はエタノールに加えてこれら成分の相乗作用でより強い消臭効果が期待できるんです。
殺菌効果も期待できる白ワイン
白ワインの殺菌効果も注目されています。白ワインは赤ワインに比べるとpHが低いために、これらの食品に含まれる各種細菌の細胞壁に入り込み、強い殺菌効果を起こすことが研究により知られています。
例えば、魚が生臭みを発生させる原因としては「アミン臭」が主な要因。魚に存在しているトリメチルアミンが細菌によって変化していき、独特の腐敗臭のような生臭さを出します。
クエン酸やビタミンCなど、こういった成分でこの臭みは消すことができますが、その細菌自体を元から死滅させるには白ワインのような低pHのお酒が効果的。もちろん、白ワインには前述したようにクエン酸やリンゴ酸などの有機酸、ジエチルスルファイドが含まれているため、プラス消臭効果も期待できます。
赤ワインのタンニンによる効果
一方、赤ワインにおいて消臭効果が期待できるのは肉類。赤ワインはタンニンを多く含んでいるため渋みが強く、長期熟成タイプが多くあります。
このタンニンなのですが、調理中や調理前に食材が酸化してしまうことで発生する、ヘキサナールといったアルデヒド系の物質と反応して、消臭効果を発揮するといわれています。
また、赤ワインといえば豊富なポリフェノールを思い浮かべる人も多いでしょう。以前から研究が盛んに行われているポリフェノールの健康効果。このポリフェノールは加熱したとしても減少することが少ないために、ワインを調理に使用することで、ポリフェノール類がもたらす健康効果の恩恵に預かれる可能性も期待できます。
ちなみにワインに限ったことではありませんが、根本的なところでエタノール自体、水よりも沸点が低いために、食材を似たり焼いたりする際に余計に熱を加え過ぎず美味しい風味を保ったまま仕上げられるメリットがあります。
世界中で調理に使用されているワイン。飲むだけではなく、料理に使用するというのも、日々の食生活を豊かにしてくれる、ひとつのアプローチなのではないでしょうか。
参考:
「ワインの秘密」清水健一
「料理の科学」斎藤勝裕
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