ビールの香りはストレス解消に効果アリ?
ワインやウイスキーの香りにはリラックス効果があるというのは有名です。しかし同じアルコールであるビールに関しては、評判があまり聞こえてきません…
と思いきや、サントリー (株) 健康科学研究所の好田裕史氏の論文によると、ビールの香りには生体内でストレスの緩和に重要な役割を果たす「GABA」を通して、ストレスを緩和する効果があるというのです。
ビール中のストレス緩和成分とは?
ストレスの緩和に重要な役割を果たしているのは「GABA」という抑制性の神経伝達物質。「寝る前に4個食べると安眠できる」で有名(?)なチョコレートの「GABA」を連想されたかたも多いと思いますが、そうです。それです。
シナプスで情報伝達を行う神経伝達物質には受容体が必要。GABAが結合する受容体にはAとBのタイプがあり、ストレスの緩和作用があるのはAタイプで、GABAA受容体と呼ばれています。
GABAがGABAA受容体に結合することによってストレスなどで発生する興奮性ニューロンによる刺激伝達を抑制し、ストレス緩和作用や睡眠を誘発すると考えられてます。
今回検証されたのは、GABAA受容体の電気的応答(=ストレス緩和作用)がどれだけ増えるかという内容です。
ストレス緩和に役立つビールの香気成分
実験はGABAA受容体を発現させたアフリカツメガエル卵母細胞を用いて行われました。
まずペンタン(香気成分を中心とする脂溶性物質)を抽出して電気的応答を調べると、GABAA受容体のGABAに対する電気的応答が大きく増え、ストレス緩和に作用することが判明。ビールの中でも特に香気成分にGABAA受容体応答を増進させる作用があることがわかりました。
エステル編
ビールの香気成分であるエステルは、発酵中に作られます。リンゴや洋梨、バナナなどフルーティーなフレーバーに。そんなビール中の主要なエステル類のGABAA受容体応答のおよぼす影響について示したのがこちら。
Aに酢酸グループのエステル類、Bにエチルグループの結果が示されています。
全体的に昂進作用があるのが見て取れますが、酢酸エチル(Ethylacetate)とプロピオン酸エチル(Ethylpropionate)の活性は強く、酢酸イソアミル(Isoamyl acetate)や酢酸ヘキシル(Hexyl acetate)などは弱いという結果に。これはエステルの構造の違いによるものと考えられます。
ホップ編
次にビールに苦味を加えるホップ。香りの成分としても重要な要素なホップですが、ここでもGABAA受容体応答が増進されるという結果が。
主要成分のα-フムレン(α-Humulone)とミルセン(Myrcene)にはGABAA受容体応答の昂進作用が認められませんが、ミルセン(Myrcene)のほうは製造過程の酸化によってミルセノール(Myrcenol)に変換されます。
ミルセン→ミルセノールの変換はビールにホップアロマの香りづけをする効果がありますが、なんとGABAA受容体の応答も増やしてくれる様子。ビールの煮沸や発酵などの工程は、ビールにホップの香りを付与するだけでなく、ホップ精油中の成分のGABAA受容体応答の昂進作用を増強する意味でも重要、といえるようです。
「酔ってストレス解消」だけでなく、香りにもストレス解消作用があるビール!たまにはゆっくり香りを楽しみながら、味わってみませんか?
参考:
ビール香気成分のストレス緩和作用
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