間食が太るのはカロリーのせいではなかった!?
お仕事やお勉強を頑張っているとついつい間食をしたくなりがちですよね。しかし残念ながら、一般的には間食は肥満につながると言われています。これだけ聞くと、間食で太るのは、常の食事以外にカロリーを余計に摂取するからだ、と思いがちですが、実はそうではありません。
2012年、アメリカのソーク大学の研究者らは驚くべき研究成果を報告しました。
それは、カロリーが同じ量となる食事をマウスに、
・時間を制限せず与える(つまり、ダラダラ食べを許す)(下図FA)
・時間を制限して与える(下図FT)
という実験を行ったところ、時間を制限せずに与えたマウス(FA)はぶくぶくと太ってしまったというものでした。
(画像元:Hatori, M., et al. Cell Metabolism 15, 848-860 (2012))
なんと摂取カロリーが同じでも、ダラダラ食べをしていると太ってしまったのです!
この結果を真に受けると、1日の総カロリーが変わらないように、おやつを食べたいからご飯の量を減らすという気遣いをしていても意味がなかった、と思えてきますね。
今日は、間食愛好家たちを揺るがすこの研究のエッセンスを、わかりやすく紹介してみたいと思います!
体内時計を狂わすのが原因
たまに寝不足になることはあれど、わたしたちが朝起きて夜寝るという規則正しいリズムで生活ができるのは、生物の中にある「体内時計」のはたらきによるものです。ところで、この体内時計の正体が何者であるかを考えたことはあるでしょうか。もちろん、体の中に時計が入っているわけではありません。
夜眠くなることを例に考えてみましょう。時刻が23時を回ると眠気が襲ってくる時、体の中では何が起こっているのでしょうか。まず、眠気が襲ってくるのは、メラトニンというホルモンの濃度が高くなってくるからです。メラトニンは、光を浴びている時間(日中)は濃度が低く、夜にかけて徐々に高くなり、深夜2〜3時をピークにして、朝7時頃には減っていきます。このように、メラトニンの量は24時間で毎日規則的に変化しています(下図のようなイメージ)。
24時間のあいだで変化をするのはメラトニンだけではなく、体の中の多くの物質は24時間周期でその量や働き方が変化します(動物によっては24時間より長い場合や短い場合があります)。こうした、物質の量の変化こそが、体内時計の正体なのです。
糖分と脂質の代謝リズムが乱れることで太る
ダイエッターが気になる「糖や脂肪の吸収・分解」といったものも食事のタイミングに伴うリズムを持っています。時差のある国へ海外旅行をしたり、徹夜をしたりしていると眠くなる時間がずれてくるように、食事の時間も規則正しくしていないと、食べ物の吸収や分解のされ方に影響してくるようです。
この研究では、冒頭と同じ2種類の条件のマウスについて、
・絶食時に濃度があがる物質(糖以外からエネルギーを取り出す酵素に関わる)
・食事中に濃度があがる物質(血糖値を下げるインシュリンに関わる)
を調べたところ、時間を決めてエサを食べていたマウスは、通常のマウスと同じような物質の濃度変化を示し、ダラダラ食べをしていたマウスは、これらの物質の濃度変化の周期が乱れていることがわかりました。
他にも、糖や脂質の代謝に関わり周期的に濃度を変化させる物質についていくつか調べており、いずれもダラダラ食べをしていたマウスは正常な周期となりませんでした。
周期が乱れると、食べ物の代謝がきちんと行われなくなり、太りやすくなったり、生活習慣病になりやすくなる可能性が高まるかもしれません。
もちろん、この実験は、マウスかつ脂肪分の高い食事だけを与えて行われた場合の結果であるため、人間が普通の食事をする場合にも当てはまるとは限りませんし保証もできません。しかし、間食をすることによって体内時計が乱れるということは、人間の場合でも起こりうるとは思います。
食べる量より、食べる時間が大切。研究が進むにつれて、これまでの総カロリーだけをみていた健康法やダイエット法は見直されてくるのかもしれませんね!
※今回紹介した論文はこちらです。↓
Time-Restricted Feeding without Reducing Caloric Intake Prevents Metabolic Diseases in Mice Fed a High-Fat Diet