自然環境の保全につながる?ジビエから日本の「いま」を考える

2017年3月15日

欧州の伝統料理を日本の家庭料理へ!ジビエ料理コンテスト

自然環境の保全につながる?ジビエから日本の「いま」を考える

2017年1月、第1回ジビエ料理コンテスト[※1]の結果が発表されました。ジビエとは狩猟によって得られた野生動物の肉のこと。狩猟が貴族のたしなみだったヨーロッパでは、歴史ある伝統料理として発展してきた食文化です。

栄えある最高賞・農林水産大臣賞に輝いたのは「猪舞(ししまい)ふりっと(猪肉のグージョネットフライ)」。みじん切りのマイタケを揉み込んだイノシシ肉でお餅を包み、衣をつけて揚げる料理です。ジューシーな肉汁とお餅のモッチリ食感が食欲をそそりますね!揚げたて熱々のおいしさはもちろんですが、冷めても固くならないのでお弁当にも重宝するそう。たんぱく質分解酵素(プロテアーゼ)をもつマイタケでお肉を柔らかくしているからです[※2]。

同コンテストではプロのシェフが国産食材を使い、家庭で再現できる身近なレシピを開発。まだまだジビエが手軽に入手できる地域は少ないですが、レストランや専門店以外でもジビエを食べられる時代が近づいているかもしれません。

高たんぱくで低脂肪なヘルシー食材、ジビエ

自然環境の保全につながる?ジビエから日本の「いま」を考える

自然環境で生息する動物は運動量も多く、人間の世界でいえば「有機食材」だけを食べて育ちます。そのためジビエは畜産肉に比べて高たんぱくで低脂肪、栄養価が高いとされています。

例えば赤身のおいしいシカ肉は、鶏むね肉よりも脂質が少なく、鉄分が豊富。イノシシ肉は脂身も美味で、ビタミンB群をバランスよく含んでいます[※3]。

その他にもマガモやアナグマなど、ジビエとして食べることのできる野生動物はさまざま。ヘルシーな食材として注目を集めています。

ジビエを食べて生態系のバランスを守る

ジビエを食べることには、私たち自身の健康効果にとどまらない大切な意味があります。それは自然のバランスを守り、野生の恵みをありがたくいただくということ。

日本に生息するニホンジカやイノシシは、その生息数と分布域を急速に増やしています。その結果、高山のお花畑や森林の植生が食べつくされるなど、生物多様性保全に影響が出たり土壌が流出したりする被害が出ています。また、近年の野生動物による農林業被害額は200億円程度もあり、その3分の2ほどがニホンジカとイノシシによるもの。

このうちニホンジカが増えた理由には、さまざまな要因が関係していると考えられています。気候変動による積雪量の減少、狩猟者の減少、天敵であるニホンオオカミの絶滅、拡大造林や耕作放棄地の拡大といった土地利用の変化、明治時代の絶滅危機による保護政策から増加に転じた後の捕獲規制緩和の遅れなど。多かれ少なかれ人間活動が関与しているのです。

国は2013年、ニホンジカとイノシシの生息数を 10 年後までに半減するとし、抜本的な捕獲強化に向けた対策に乗り出しました[※4]。翌年には「鳥獣保護法」を「鳥獣保護管理法」に改正し、「野生鳥獣肉の衛生管理に関するガイドライン」[※5]も作成。先のジビエ料理コンテストも、農林水産省の事業として国産ジビエ流通規格検討協議会が主催したものです。

しかし、実際には捕獲された動物の大部分がそのまま廃棄されている状況。資源として有効に活用することが求められています。生態系のバランスを守るためとはいえ、命と引き換えにしていることから目をそらさず、そのお肉に感謝しておいしくいただくことが大切なのではないでしょうか。

参考:
※1 第1回ジビエ料理コンテスト(日本ジビエ振興協会)
※2 キノコプロテアーゼを利用した肉軟化のための基礎的検討
※3 食品データベース(文部科学省)
※鶏むね肉は皮つきのデータを参照
※4 抜本的な鳥獣管理対策について(環境省・農林水産省)
※5 野生鳥獣肉の衛生管理に関するガイドライン(厚生労働省)

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琴田まこ
生態学と化学で「食」を斬るサイエンスコミュニケーター。
旬のものと地のものに目がない。今日も自然の恵みに感謝。