「飲む酵素」は間違いだらけ!?
基本的に平和主義な味博士の研究所ですが、中には許容ができないものがあります。その一つが「飲む酵素」!最近は、食べ物や飲み物から「酵素」を摂って健康やダイエットに役立てようというものが流行っておりますが、科学的な立場からはこの考え方を肯定するは難しいです。
ただダイエットドリンクの一つとして売られているだけであれば良いのですが、「酵素栄養学」について勉強したり、自分で酵素を作るイベントなどに参加する際にはとても注意が必要です。
今日は、みなさまに心得てほしい、「飲む酵素」にまつわる誤った知識についてお知らせします。
間違い1:「一生のうちに酵素が作られる回数には限りがある」はウソ
「酵素は細胞の中にある遺伝子の情報が”翻訳”されることで作られますが、人が一生に”翻訳”できる回数は限られています。このため、足りない酵素を外部から摂る必要があるのです。」
というものがあります。
しかし、”翻訳”される回数が限られているという事実はありません。
少なくとも、生物学や遺伝関連の教科書にそのような記述はありませんし、そのような現象を発見したという報告はありません。年齢とともに”翻訳”の機能が低下することはありますが、基本的にはどんな年齢の人にも共通して、遺伝子から酵素が作られる時には「この酵素を作れ」というようなシグナルが細胞内で伝達されます。あくまでそうしたシグナルが酵素を作る引き金となるので、シグナルを伝える機能が保たれている限りは、「残り回数0」のようになることはあり得ないのです。
もしも病気で特定の酵素が作られなくなった時でさえも、頼るべきは酵素ドリンクではなく、お薬です。
間違い2:「摂った酵素は体内で働く」はウソ
つまり、「酵素」の形のまま体の中で働くことはないのです。
かなり大胆なことを言えば、酵素ドリンクでダイエットするのも、お肉の脂身以外の部分を溶かしたものを飲んでダイエットするのも、やってることはあんまり変わらないのではないでしょうか(もちろんアミノ酸の種類やその他の成分に違いはありますが)。
足りない酵素を外部から摂取して補うという考え方は、髪の毛を食べてそのまま髪の毛になると思うのと同じぐらい、誤った考え方なのです。ただし、アミノ酸は生体に必要な材料ですので、アミノ酸を取る目的で酵素を飲むのは悪いことではありません。
間違い3:「酵素液を手で混ぜたり常温保存するといい」のは大間違い
「酵素液は手を洗わずに素手で混ぜると、自分に合う酵素ドリンクができます。また、常温保存することで体に吸収されやすくなります。」
という話です。
声を大にして言いますが、そんなことは、あり得ません!!
食べ物は、手をよく洗ってから食べる、時にはアルコール消毒までするのが基本です。手には何億もの細菌が付着していて、中には体に有害なものもあります。もちろん、酵素液に浸せばそれらが全滅するようなこともなければ、”自分に合う”酵素に生まれ変わる魔法もありません。
常温保存に関しても同じで、生ものは要冷蔵が基本です。常温で良いのは、糖分が高いもの(ジャムなど)や塩分が高いもの(漬物など)だけです。糖分や塩分が高いと、微生物が繁殖しないからです。酵素液は、糖分も塩分も微生物が繁殖しないほど高くはないはずです。
酵素液を手で混ぜたり常温保存するのが良いというのは非科学的です。健康のために飲んでいるはずなのに、むしろ体に悪い場合があるなんて、本末転倒!
もちろん、「これは薬ですよ」と言われた砂糖を飲んで病気が治るような「プラセボ効果」はあり得ますし、好んで飲んでいる消費者の方々を否定するつもりはございません。しかし、酵素を外部から摂るという考え方自体は、見直す必要がありそうです。個人的に「間違い3」は絶対にやめてほしいと思います。普通に、超バッチイだけです。