人生にギャンブルはつきものです。……というと少し怪しい響きですが、仕事で勝負に出なければいけない重要な会議、一世一代をかけた愛の告白、ソシャゲのガチャ、ブラックジャックでヒットするかなど、「賭け」をする機会は身近にたくさんありますよね。
リスクを取ってでも強気でいきたいタイミングがある反面、できれば穏便にいきたいときもあります。
そんな危険を冒す行動と味覚には関連があるようなんです。オンライン版のScinetific Reportsに掲載された研究結果によると、酸味を摂取した場合、賭けに出る傾向が高くなるそうです。
いかに高い額の賞金を手にできるか?!ドキドキ風船ゲーム
研究では、基本5味(甘味・旨味・酸味・苦味・塩味)とリスクの選択についての実験が行われました。参加者は英国での平均25歳の男女70人とベトナムでの平均20歳の男女71人です。
リスクを取るか取らないかという実験を調べるに際し使用されたのはBalloon Analogue Risk Task (BART) 。これはコンピュータ上で行う風船ゲームで、参加者のクリックにより送風機から風船に風が送られ、風船が大きくなるごとにもらえる賞金額が増えていくというもの。膨らませすぎると風船は爆発し、賞金額は0になってしまいます。
参加者がクリックをやめ賞金額の打ち止めを選択するか、風船が爆発するまでが1試行。ギリギリまで大きく膨らませ多くの賞金を手に出来るか、はたまた膨らませすぎて風船を爆発させてしまうか、という賭けですね。
参加者は各基本5味(甘味・旨味・酸味・苦味・塩味)を含んだ飲料またはミネラルウォーターを摂取したのち、このゲームにチャレンジしました。実験は参加者1人につき2回行われ、1回は各基本5味のいずれか、もう1回はミネラルウォーターの摂取となっています。
共通していたのは酸味飲料を飲んだあとのクリック回数
英国の場合
まず、英国では甘味と旨味は安全性の高い道を選び、苦味と塩味に関しては判断に影響せず、酸味の場合は他の味よりも有意に高くリスクを選択するという結果になりました。甘味、旨味、苦味、塩味を摂取した参加者の平均的なクリック数が20〜35回にとどまっていたのに対し、酸味に関しては39.36回にのぼっています。
また、平均的なクリック間の時間において、甘味を摂取した群は平均クリック時間がもっとも長く、酸味、塩味、苦味、旨味と続いています。甘味と酸味は対照的で、甘味は爆発しない風船に対して悩む時間が爆発した風船より有意に長く、酸味は爆発した風船に対して悩む時間が爆発しない風船に対して悩む時間より有意に長くなっています。
甘味は悩んだすえに安全策を取る傾向にあり、酸味は悩みはするものの挑戦する傾向にあることがわかりますね。
ちなみに塩味も酸味と同様、爆発した風船に対して悩む時間が爆発しない風船に対して悩む時間より有意に長いため、酸味と同じような傾向を示すようです。
ベトナムの場合
ベトナムでもクリック数は酸味が最も多くなり、50回を超えました。ただし、英国は甘味・旨味を摂取した際に安全性の高い道を選ぶのに対し、ベトナムでは塩味・苦味を摂取した際のクリック数が少ないという結果になっています。
クリック間の時間については、甘味がもっとも平均クリック時間が長く、苦味、旨味、塩味、酸味と続いています。旨味、苦味、酸味、塩味に関しては爆発しないバルーンに対して悩む時間が爆発した風船より有意に多く、甘味はどちらにしても長考するという結果に。
酸味の場合は判断も早くスパスパ賭けていきますが、甘味は悩んだすえに挑戦する傾向にあるようです。
どちらも共通しているのは、酸味を摂取すると勝負に出る傾向にあるということ。うつ病、不安、ストレス関連の疾患といった精神障害にレモン油の使用が効率的という報告があることから、酸味は不安感を低減しチャレンジを促してくれる味覚であると言えそうです。
2カ国間でも、クリック間の行動や他の味覚を摂取した際の行動は異なっています。日本人がやってみると、また別の結果になるのかもしれません。
ただ、共通している酸味のクリック数が多いという点は、日本人にも当てはまる可能性がありそうですね。仕事で勝負に出なければいけないタイミングでは酸味を摂取してみるなどを試してみる価値はあるのではないでしょうか。くれぐれもギャンブルの危ういタイミングで酸味を摂取しないようご注意ください!
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