「味を感じる」ことの意味とは?各味覚の働きについて

味覚は5つの味から形成され、基本5味と呼ばれています。それは甘味・旨味・酸味・苦味・塩味の5種類。

普段「美味しさ」に着目しがちなこれらの味ですが、実は生物が体に必要な成分を選別する、重要な機能をも担っているんです。

今回は各味覚の生態学的な役割について見てみましょう。

甘味

甘味と聞くと砂糖を思い浮かべがちではありますが、例えば私たちの主食であるご飯に含まれるでんぷんも分解されて糖になります。こうした「糖質」はエネルギー源のため、ヒト以外にもサル、ラットといった雑食性動物も甘味を好みます。この「甘味を好む」行動は本能であることが、今までの研究から示されています。

旨味

だしやトマトなどが代表的な旨味物質を含む食べ物は、アミノ酸や核酸といった私たちの体を作る上で必要な材料を含んでいるものが多いです。こちらも甘味と同様、本能的に好まれる味です。ちなみにこの旨味成分(グルタミン酸ナトリウム)を発見したのは日本人なんですよ!

酸味

酸味といえばレモンやお酢。「クエン酸」が疲労回復に役立つ成分として広まっていますが、自然界では酸味は熟していないフルーツや腐った食べ物から発せられる「危険信号」の役割を持ちます。小さい子どもが酸っぱいものを忌避するのはこのためです。

苦味

コーヒーやビールなど「大人の味」の代表格である苦味。苦味も酸味と同様、「毒」として小さい子どもや雑食性動物には忌避される味です。この苦味が「毒ではない」ことを知り、繰り返し食べることによって好きになっていくというのが「苦味を美味しく感じる」ようになるプロセス。

塩味

しょっぱいものを食べると喉が乾いて水分を欲するため、塩分と水分を摂取する意味で塩味も好まれる味です。ラットなどは、一定濃度までの食塩水は好み、高濃度の食塩水は忌避するそう。これは、ある濃度まではミネラルを含む信号として好まれるものの、高濃度になると脱水症状や体内のミネラルバランスを壊してしまう恐れがあるからだそうです。

ただし、羊水に一定濃度の塩が含まれることから、生まれたての赤ちゃんは塩味を感じにくいんだとか。

最近では、胃腸にも味覚の受容体の存在が確認されていて、これらにも体内のバランスを保つ役割があるようです。例えば腸の甘味受容体は、血糖コントロールに一役買っている可能性が示されています。

ご飯やパンなどの炭水化物は、唾液中のアミラーゼですべて分解されるわけではありません。膵臓から腸内に注入される膵液中のアミラーゼで多くが麦芽糖に変化します。つまり、口内の甘味受容体だけでは糖分を摂り過ぎてしまう恐れがあるんです。そこで役に立つのが腸の甘味受容体なんですね。

生きていく上で重要な役割を持った、私たちの味覚。味覚を鋭くして薄味の食べ物を好むようになると、糖分や塩分の摂り過ぎを防ぐといったこともできるようになります。味覚をコントロールして、健康な生活を送りましょう!

参考:
風味の快楽

関連記事:
胃腸に味覚の受容体が存在する理由を真面目に考察する
味覚が鈍ってるときには「レモン水」を飲むと回復するかも!
【発見】やみつきになる食べ物の秘密を味覚センサーで解明してみた

味覚の知識カテゴリの最新記事